2−2 既存文献調査

既存文献に示される福島盆地西縁断層の活動性・断層の存在等について検討するために以下の文献・資料を収集した。

1)第四紀後期における断層の最終活動時期・活動性・連続・規模に関わる文献

@地質調査所(1984)1/50万,活構造図「新潟」A東京大学出版会(1991)「日本の活断層」−その分布と資料−,148−151

B松田時彦(1973)福島盆地西縁活断層系,日本地質学会第80年学術大会講演要旨,28,281

C新屋浩明(1984)白石−福島活断層系の断層変位地形と最新活動時期,東北地理,36,219−231

D渡辺満久(1986)福島盆地北半部西縁の断層変位地形と断層露頭,活断層研究,2,29−32

2)福島盆地の地質構造・活動性に関わる文献

E鈴木敬治・吉田義(1972)福島盆地の形成史について,地質学論集,7,285−295

F大槻憲四郎・中田高・今泉俊文(1977)東北地方南東部の第四紀地殻変動とブロックモデル,地球科学,31,1−34

G櫻井一賀(1985)福島市飯坂町における台山断層の露頭,活断層研究,1,37−40

H渡辺満久(1985)奥羽脊梁山脈と福島盆地の分化に関する断層モデル,地理学評論,58,1−18

3)断層周辺の第四紀地質に関わる文献

I鈴木敬治・小河靖男・大場真一(1964a)福島盆地北西縁の藤田扇状地より産出した木材の絶対年代,地球科学,73,36

J鈴木敬治・大場真一・富山紀子(1964b)福島市の沖積層および洪積層より産出した木材の絶対年代,地球科学,73,38−39

K吉田義・伊藤七郎・鈴木敬治(1965)福島市の洪積層(福島層)より産出した木材の14C年代(その2),地球科学,78,40

L吉田義・伊藤七郎・鈴木敬治(1969)東北地方南部阿武隈川流域の第四紀編年と2・3の問題,地団研専報,15,99−125

M町田洋・新井房夫(1976)広域に分布する火山灰−姶良Tn火山灰の発見とその意義−科学,46,339−347

4)過去の地震に関わる資料・等

N宇佐美龍夫(1996)「新編日本被害地震総覧」東京大学出版会,p48,p76

O松田時彦(1975)活断層から発生する地震の規模と周期について,地震,2,28,269−283

P松田時彦(1990)最大地震規模による日本列島の地震分帯図,地震研究所彙報,65

,289−319

以上の文献のうち、本調査の目的に重要な意味を持つ「第四紀後期における断層の活動性・連続・分布・規模に関わる文献」について以下に要約した。

@地質調査所(1984)1/50万,活構造図「新潟」では福島盆地西縁断層を第四紀後期に活動した活断層として表記している(図2−3)。

ただし、福島盆地西縁断層を複数の断続的な断層群としている。

A「日本の活断層」−その分布と資料−では、白石市から連続する越河断層を含めて8条の断層群として記載している(図2−4、表2−1)。

B松田(1973)は、白石市から桑折町に連続する断層系に関して阿武隈北部に分布する小起伏面および扇状地の変位量から、この断層系の平均変位速度は0.1〜1.0mm/年であるとしている。

C新屋(1984)は、福島盆地西縁断層について図2−5図2−6図2−7図2−8の位置に分布するとし、これらの最終活動時期について、更新世後期の段丘面を区分し14C年代から予想される形成時期との関連から検討を行なっている。これによれば、福島盆地西縁断層帯における各断層の最終活動時期は必ずしも一致しないとしている。特に、庭坂−佐原付近の断層で予想される最終活動時期は北部の桑折断層などよりも古いとしている(図2−9)。

D渡辺(1986)は、福島盆地西縁断層を越河断層、大木戸断層、藤田東断層、泉田断層系、桑折断層、湯野断層系、台山断層、白津断層に区分している(図2−10)。このなかで、桑折断層において藤田面構成層が断層によって切られる露頭の記載を行なっている(図2−11)。また、この地域では藤田面の垂直変位量が15mに達するのに対し、沖積段丘には変位は見られない(1万〜数千年の間は活動していない)としている。