@既存文献調査によって対象となる断層の分布・連続・活動性を把握するとともに、解決されるべき問題点とその優先順位を検討する。収集する文献は福島盆地西縁断層帯に関わるもので、1)第四紀後期における断層の活動性、規模、連続に関わる文献、2)福島盆地の地質構造等に関わる文献、3)断層周辺の第四紀地質に関わる文献、4)過去の地震に関わる文献とし、既存のボーリング資料および地質調査報告なども対象とする。
A空中写真の判読では、より高い精度で断層に由来する可能性の高いと判断される変位地形の連続を確認するとともに断層活動の基準地形となる地形面(段丘面等)の分類・対比を行なう。この結果から地表踏査の重点事項ならびに範囲を確認し、同時に浅層反射法弾性波探査の測定位置と対象を決定する。
使用する空中写真は原地形をより留めていることが必要であることから、米軍撮影の1/10,000,もしくはこれに相当する時期に撮影された空中写真で縮尺1/10,000〜1/20,000のものと全域を撮影した縮尺1/10,000〜1/40,000のものとする。
B地表踏査(概査)では、文献調査・空中写真判読によって予察された断層に沿って段丘面の変形、高度差を確認し、周辺の地質状況を把握する。この際、地層の傾斜や分布、第四紀の地層を切る断層面の存在などから断層の連続する位置を明らかにし、詳細な地質踏査を行なう範囲を確定し、調査成果を縮尺1/10,000の地形図を基図としてまとめる。調査の範囲は66Km2程度とする。
精査では、断層の分布が明らかな地区を優先に周辺の地質分布、地層の傾斜などを確認し断層面の存在や地表面付近に到達する位置を検討する。また、断層の活動性や最終活動時期の特定に必要と判断される場合は1/20〜1/100の露頭記載もしくは地形の簡易測量を行ない地形と断層の関係を明らかにする。堆積物や地形の形成年代を明らかにするための試料として炭化物や火山灰の採取を行なう。調査範囲は5Km2程度とし成果は縮尺1/2,500の詳細図にまとめトレンチ調査候補地を8箇所以上選定する。
C本調査での浅層反射法弾性波探査は福島盆地西縁断層帯のうち北東部に位置する桑折断層系と南西部に位置する台山断層の連続性に関わる地下構造把握を目的としておこなう。各探査測線は1Km程度、探査深度は深度200mを十分に解析できるまでのものとする。測定の際、受振点間隔は5m、起振点間隔を10mとする。
Dボーリング調査はトレンチ調査および大型ピット調査の実施位置を決定するためにおこなうものとし、調査の深度は10〜20m程度、各地点2ないし4孔の掘削を行ない総掘削深度は200m程度とする。コア採取はオールコアで掘削外径86mm以上とし、掘削工法は採取率を十分満たせるものとする。
採取されたコアについて粒度、層相、堆積構造などの記載を縮尺1/20でおこない、断面図を作成し断層の有無、地層の変位・高度さを確認する。これをもとに断層の位置を確認しトレンチおよびピット掘削位置最終決定を行なう。採取されたコアは分析のための試料採取を行なう。また、採取したコアはコア箱に納め半割りにして層相の写真撮影を行なう。
E本調査のトレンチ調査は、表層の地質状況および断層の表層部における形態確認のための大型ピット調査と、断層の最近の地質時代における変位の有無を確認し、試料採取によって得られる地層の年代から断層の最終活動時期、活動間隔、単位変位量などを明らかにするためのトレンチ試掘調査を行なった。
大型ピット調査は長さ6m、幅3m、深さ2m程度とし実施箇所は5箇所を計画した。ピット掘削では壁面に現れた地質の観察をおこない20m2程度の範囲について縮尺1/50のスケッチ図を作成する。
トレンチ試掘調査は、2箇所を計画し長さ8m、幅4m、深さ2m程度の掘削を行なう。掘削した法面は整形を行ない全ての法面(約50m2)について縮尺1/20のスケッチと解釈図を作成する。
F地形地質調査、ボーリング調査、大型ピット調査、トレンチ試掘調査では断層による変位、最終活動時期・活動間隔に関わる地層の年代を明らかにするため、年代測定のための試料を30個程度採取する。
G総合解析
以上の調査・探査・分析の結果をもとに各調査項目についての解析・検討を行なう。また各調査の結果を比較検討して、調査終了段階において言及できる範囲について断層の分布・連続、活動性、最終活動時期、活動間隔、単位変位量などについて検討し、活断層の危険度に対する評価を行なう。また、調査結果から今後必要と判断される。調査の計画、調査項目、数量、実施位置、実施優先順位等について検討する。