8−2−3 現段階での評価・課題と調査の方針

会津盆地西縁断層帯については,今後,平成12年度及び平成13年度の2カ年で調査が計画され,平成12年度においては,主に,本断層帯北部の加納断層及び会津盆地西縁北部断層の諸元に関して調査を行うこととなっている。

現段階での,会津盆地西縁断層帯に関する評価と課題は以下のとおりである。

北部断層に関しては,寒川(1987)は,西暦1611年の会津地震を本断層の活動によるものとし,その際の鉛直変位量を約2.5mとしている。また,粟田ほか(1993)は,地質調査所が行った塔寺地点のトレンチ調査結果等から,北部断層の平均的な活動間隔は約1700年,単位変位量は鉛直約3mと推定している。

会津地震は,その被害分布,規模等からみて,会津盆地西縁断層帯の活動による可能性が高いと思われるものの,この地震時における地表変位については,直接的なデータはもちろん,その痕跡も確認されていない。また,粟田ほか(1993)が活動間隔と単位変位量を求めた塔寺地点の沖積3面については,3面のうち最も高位の塔寺T面の年代が推定されているのみである。

これらのことから,平成12年度調査においては,寒川(1987),粟田ほか(1993)等による最新活動時期及び平均的な活動間隔と単位変位量をより確実にすることが最優先課題と考えられる。

また,粟田ほか(1993)による北部断層の活動間隔と単位変位量は,約7000y.B.P.以降における断層活動を5回として求めた平均的な値である。北部断層,南部断層等の各断層の独立・連動性を評価する上で,また,地震の切迫度とその規模を精度良く想定する上で,各断層について,活動履歴とそれぞれの変位量を解明することが重要である。このことから,北部断層等について,トレンチ調査等により直接,具体的な活動履歴を明らかにする必要がある。

一方,会津地震は,宇佐美(1987, 1996)により M=6.9とされており,この地震規模から松田式(1975)により想定される地震断層の長さは約17kmである。会津盆地西縁断層帯の全長は40kmに達することから,会津地震時に,本断層帯の全線が活動したとは言いがたく,震央位置及び被害分布から,南部断層は会津地震時には未破壊であった可能性がある。このことから,地震防災上,南部断層の評価が重要と考えられる。

しかし,南部断層中央部の米沢測線で平成11年度に実施した反射探査結果によると,地表面下約100m以浅では10°程度の撓曲変形となっていることから,南部断層の調査は難航することが予想される。このため,平成13年度に予定されている南部断層に関する調査を効率的に行うためのデータを得ることを目的に,平成12年度調査において,先行的に調査を行う必要がある。

以上のことから,

@北部断層の平均的な活動間隔と単位変位量の精度向上

A本断層帯北部における具体的な活動履歴の解明

B南部断層の先行調査

の3項目を平成12年度調査の重点課題として調査を実施する