7−7 鶴野辺地区の調査結果(精査地区)

本地区は,新編「日本の活断層」(1991)による会津盆地西縁南部断層の北部に位置し(図7−1),断層は確実度Tとされている。

本地区の空中写真判読図を図7−7−1に,地質図を図7−7−2に,地質断面図を図7−7−3に示す。

空中写真判読結果によると,会津盆地西縁南部断層に対応して,LA 一部LB リニアメントが認められる(図7−7−1)。リニアメントの西側に広く分布する各段丘面は,リニアメントの近傍で東方への撓曲を示し,撓曲の末端部において,M1面堆積物の上面が15°程度の東傾斜を示すことが確認された(図7−7−4)。

各段丘面の変位量については,地形測量の結果,図7−7−5に示すように,低下側の沖積低地を基準として,H3面で約35m,M1面で約27m,M2 面で約 12mと計測され,変位が累積されていることは明らかである。しかし,いずれの値も,低下側の基準面が確認されていないことから,正確な変位量とみなすことはできないが,M1 面(下末吉面相当)を基準とすると,平均変位速度は0.2m/103年以上と見積もることができる。なお,M2面では,値が他の面と比較してやや小さいが,これは低下側の沖積面が沼沢火砕流堆積物に覆われているためと考えられる。また,M2面と沼沢火砕流堆積面とは直線的な境界で接していることから(図7−7−6),同堆積面が断層変位を受けていることも考えられるが,確実ではない。

また,リニアメント付近の地表部には,塔寺層以下の地層が確認できず,その構造は不明であることから,その南側の米沢測線で,リニアメントの延長部を挟み,P波による反射探査を実施した。同測線の深度断面を図7−7−7−1図7−7−7−2に示す。

測線の全体では,地層は 5°以下の緩い東傾斜を示すものの,測線中央部の標高約 −300m以深に西上がりの断層が存在することは確実である。その上方の標高約 −300m以浅では,反射面の不連続は認められないものの,地層の傾斜が周囲よりもやや急な撓曲変形となっており,撓曲部における地層の傾斜は,標高約 −200mでは約22°,標高0m付近で15°,標高100m付近で約10°を示す。表層部における反射面は不明瞭であるが,撓曲の上方延長は, CMP番号 200〜250付近で地表に達するようにみえ,その位置は上記リニアメントの南方延長部に当たる。

反射断面と地表地質との対比によると,図7−7−8に示すように,標高 −200m〜 −100m付近の反射面に乏しい区間が七折坂層の火砕流堆積物に,標高100m付近の反射面が塔寺層のTd−2火砕流堆積物に対比されれる可能性がある。

反射探査で推定された上記撓曲構造付近の地形には,変位を示唆する明瞭な地形は認められず,その南方延長部の米沢付近及び雀林付近においても明瞭な変位地形は認められない(図7−7−9)。

なお,本地区では,上記の会津盆地西縁南部断層の西方に,同断層とはやや斜交し,NNW−SSE方向のLD一部LCリニアメントが判読され(図7−7−1),このリニアメントに近い反射測線の西端部( CMP番号 520付近)に西上がりの断層あるいは撓曲が推定されれる(図7−7−7−1図7−7−7−2)。また,このリニアメント近傍の一部では,塔寺層は約30°東傾斜を示し,周囲の構造に比べて急傾斜を示す(図7−7−2図7−7−3)。これらのことから,リニアメントの位置に会津盆地西縁南部断層とは別に,西上がり断層が存在する可能性がある。