トレンチの北側法面のスケッチと写真を図4−10−1、図4−10−2に、南側法面のスケッチと写真を図4−11−1、図4−11−2に示す。ピットA及びピットBのスケッチ、写真は巻末資料に示す。トレンチ及びピットには、厚い黒色土壌の下位に礫層と腐植質なシルト〜砂層、砂質シルト等の細粒堆積物との互層が分布する。細粒堆積物のうち比較的連続のよいものを下位よりa層、b層、c層とする。特に、c層は砂質シルトと下位の腐植質なシルト〜砂層の組み合わせで特徴づけられる。14C年代は、c層が約7800y.B.P、a層が約9000y.B.Pの値を示す。
トレンチ内の堆積物は下位から上位まで、ほぼ平行に東方へ10数度の傾斜を示している。この傾斜は、地形面の傾斜とほぼ同程度であり、撓曲変形しているものと判断される。このことから、約7800y.B.P以降における活動は確実であるが、a層からc層の堆積面がほぼ平行に変形していることから、約9000y.B.P〜約7800y.B.Pの間の活動はなかったと考えられる。
トレンチ内の撓曲変形する堆積物中に3箇所で、正断層による堆積物の落ち込みが認められる。いずれの落ち込みも下方では、深度2m〜3m程度で変位が収束する。これらの断層は、いずれも地表部の黒色土壌直下まで変位を与えているが、黒色土壌基底には変位は認められず、黒色土壌の最下部の14C年代は約4700y.B.Pを示す。この堆積物の落ち込みは、撓曲変形によるものと考えられ、活動時期は、約7800y.B.P以降〜約4700y.B.P以前となる。
また、西方隆起側の平坦面上のピットBからトレンチを挟んで、東方低下側の平坦面上のピットAまで、特徴的な細粒堆積物であるc層の連続が確認され、その鉛直変位量は、約5mとなる(図4−12)。