3−1−1 新宮地点の調査結果

大川以北の北部断層は、山地と盆地の境界付近にバルジ状地形を伴うことで特徴付けられ、本地点でも、最低位の段丘面がバルジ状を呈している(図3−1)。

本地点では、このバルジを中心にボーリング調査及びトレンチ調査を実施し、バルジの前面で第1トレンチを、バルジの背後で第2トレンチを掘削した(図3−1)。バルジ前面におけるボーリング調査結果によると、地表面下6m〜7m程度以深に、5万年前よりも古い地層に変位を与えている西上がりの断層及び幅の広い撓曲が認められ、その上位に分布する完新統も、傾斜は緩いものもバルジ状の地形と一致して撓曲変形している(図3−2図3−3)。このうち、約6000y.B.P層準から約2500y.B.P層準までの層厚はほぼ一定で、第1トレンチにおいてもこの間の堆積物に構造差がないことから(図3−3)、バルジを形成している断層については、約6000y.B.P以降の活動は最新活動の一回で、その時期は約2500y.B.P以降である可能性があることが明らかとなった。

一方、バルジ背後の逆向き低崖を掘削した第1トレンチにおいては、バルジ側上がりの逆断層が認められ、約1900y.B.Pの腐植層に変位を与えていることが確認された(図3−4)。この断層においても、約5700y.B.P〜約1900y.B.Pの堆積物はほぼ平行に変形していることから、少なくとも約5700y.B.P以降の断層活動は最新活動の1回で、その時期は約1900y.B.P以降であることが明らかとなった。

以上のように、本地点では、バルジ前面の撓曲(主断層)とその背後の断層(バックスラスト)とは少なくとも約6000y.B.P以降の活動履歴がほぼ一致することから、両者は同時に活動しているものと判断され、本地点における断層の最新活動時期は約1900y.B.P以降に限定できた。

また、約6000y.B.P層準とその下位の約8000y.B.P層準とを比較すると、両者には明らかな構造の差が認められ、バルジを挟んだ西側隆起の高度差は、約6000y.B.P層準で鉛直約2m、約8000y.B.P層準で約4mと有意な差が認められた(図3−3)。これらのことから、最新の1回前の活動は、約8000y.B.P以降〜約6000y.B.P以前と判断された。

本地点にみられるバルジは、地表付近の逆断層変位に伴う水平圧縮力によるふくらみと解釈されることから、断層の変位量はバルジを挟んだ両側の高度差となり、調査範囲内では、最新及び一回前の1回分の累積変位量は約4m(鉛直成分)であった(図3−3)。

なお、本地点における変形帯の幅は、さらに広い範囲に及んでいる可能性も考えられ、上記の活動履歴や変位量についてはより広範囲における確認が必要と考えられた。