鈴木・小荒井 (1989,1990)は,この段丘堆積物基底面の鉛直変位量を,双葉断層の最新活動における一回当たりの変位量とみなし,その時期は,断層露頭の上流約200m地点の露頭(図4−1のB地点)における14C年代測定結果から約3700y.B.P.以降としている。
この断層露頭は平成2年に行われた護岸工事のために失われたことから,福島県の平成8年度調査では,表層堆積物の分布状況及び断層の表層部における形態を確認することを目的に,真野川右岸の段丘面上の図4−3に示す位置でピット調査が行われている。このピット(TS−1)の観察結果及び同ピットから採取した試料の14C年代測定結果によると,本地点における双葉断層の最新活動時期は,約2200y.B.P.以降,約1900y.B.P.以前である可能性が高いことが明らかとなった(図4−4)。
平成8年度のピット(TS−1)調査は,深さ約2mで実施したことから,ピット内で確認された表層堆積物の変位と上記の真野川右岸の断層露頭で確認された段丘堆積物基底面の変位との直接の関係は明らかになっていない。このことから,本地点において,@双葉断層の最新活動時期をさらに確実にすること,A最新活動の一回前の活動の有無を確認すること,B単位変位量を明らかにすること等を目的に,図4−5に示す位置で,長さ約 22m,幅約 14m,深さ約9mのトレンチを掘削した。