3−3−4 栃窪北ピット(TN−1,TN−2)調査結果

両ピットは,平成8年度において,最新活動時期を明らかにすることを目的に,栃窪南の真野川左岸に分布するA面上で掘削された(図3−3図3−16)。

両ピットには,下位より,礫層,礫混じり褐色砂質シルト層及びそれを覆う土壌堆積物が分布し,土壌堆積物中には,連続の良い黒色土壌「イ」及び「ロ」が,両黒色土壌間には暗灰色礫質シルト層が挟在する(図3−17図3−18)。

両ピットにおいて,礫層を覆う礫混じり褐色砂質シルト層は,層厚が断層の西側で厚く,礫層上面を埋めて堆積していることから,礫層堆積後の断層活動により礫層上面が変形し,その後,礫混じり褐色砂質シルト層が礫層の上面を埋めて堆積した可能性が考えられる(図3−19)。しかし,礫層とその上位の礫混じり褐色砂質シルト層との構造の差が明瞭なものではないことから,この断層活動は確実なものではない。

ピットTN−2においては,黒色土壌「イ」及び「ロ」はいずれも東落ちの断層変位を受けていることが確認され,黒色土壌「ロ」形成以降における断層活動があったことは確実である。

両ピットにおける14C年代測定結果によると,黒色土壌「イ」は8380±120y.B.P.〜8150±120y.B.P.の値を,灰色礫質シルト層は7190±90y.B.P.の値を,黒色土壌ロ」は3520±80y.B.P.〜2860±80y.B.P.の値を示す(図3−7図3−8)。

したがって,本地点においては,約3000y.B.P.以降における断層活動が確認され,この活動は,その年代から,前述の栃窪南のピットTS−1で確認された最新活動に対比される。それ以前の断層活動として,礫混じり褐色砂質シルト層堆積前で礫層堆積後すなわち約8300y.B.P.以前における断層活動の可能性が考えられる。

なお,本ピットにおいては,最新活動に伴う地層の変位量として,鉛直約0.4m〜約1.2mの値が計測されるものの,栃窪北のピット(TN−1)の場合と同様,これらの値は,真の値を示していないものと判断されることから,断層のパラメーターとして採用しない。