本ピットには，礫層，砂層及びそれらを覆う土壌堆積物が分布する（図３−５）。

ピットの西半部では，礫層及び礫層中に挟在する砂層の薄層は撓み状に東方に最大約２０°の傾斜を示し，ピット中央部で礫層の上面に東側が低い鉛直高度差が認められる。礫層を覆う黒色土壌「α」も礫層の低下側のみに分布し，礫層上面と調和的に撓み状の形態を示すこと，一部で黒色土壌「α」が礫層中に落ち込んだ分布を示すことから，黒色土壌「α」は断層による変位を受けている。しかし，その上位の褐色土壌「ａ」，黒色土壌「β」及び褐色土壌「ｂ」は，本ピット内において連続良く分布し，変位は認められず（図３−５），褐色土壌「ａ」以上の各層と黒色土壌「α」以下の地層とには顕著な構造差が認められる。

これらのことから，黒色土壌「α」と褐色土壌「ａ」との間に断層活動があったものと判断でき，褐色土壌「ａ」には変位が認められないことから，この活動が最新活動となる。

本ピットにおける ^１４Ｃ年代測定結果によると，黒色土壌「α」が３０４０±６０ｙ．Ｂ．Ｐ．〜２２１０±６０ｙ．Ｂ．Ｐ．の値を，褐色土壌「ａ」が１９３０±６０ｙ．Ｂ．Ｐ．の値を，黒色土壌「β」が１２００±７０ｙ．Ｂ．Ｐ．及び１０３０±８０ｙ．Ｂ．Ｐ．の値を示す（図３−５）。

以上のことから，本地点における双葉断層の最新活動時期は，約２２００ｙ．Ｂ．Ｐ．以降で約１９００ｙ．Ｂ．Ｐ．以前であることが明らかとなった。

なお，本ピットにおいては，最新活動に伴う地層の変位量として，鉛直約０．７ｍ〜約１．３ｍの値が計測される。しかし，これらの値は，同一基準面でもバラツキが大きく，変位量分布にも系統性はなく，また，後述の栃窪南トレンチで明らかとなった２回分の累積変位量と同程度の値を示す。したがって，本ピットで計測される変位量は，真の値を示していないものと判断され，その原因として，断層帯内部での地層変形あるいは横ずれに伴う見掛けの変位，変位基準の精度が低いために生じる誤差などが考えられることから，断層のパラメーターとして採用しない。