1−6 調査結果の概要

平成8年度に実施した文献調査,空中写真判読及び地表地質踏査のいずれの調査結果によっても,双葉断層は,その北部区間の原町市大原以北の10数km間においてのみ,後期更新世以降における活動が示唆され,そのうち相馬市遠藤付近から鹿島町橲原に至る間においては低位段丘面あるいはその堆積物に変位を与えていることが確認された。一方,双葉断層の南部区間については,少なくとも原町市大谷以南において,中位段丘面及び低位段丘面には変位・変形は認められないことが確認され,双葉断層の後期更新世における活動がないことを示す地形・地質的データが得られた。

さらに,平成8年度には,双葉断層の北部区間でピット調査が実施され,鹿島町栃窪における双葉断層の最新活動時期は,約3000y.B.P.以降であることが確認され,そのうち約2500y.B.P.以降で,約1000y.B.P.以前である可能性が高いことが明らかとなった。

平成9年度においては,双葉断層の北部区間において,ボーリング調査・トレンチ調査が実施された。その結果,双葉断層の北部区間における最新活動時期は約3000y.B.P.以降,約1000y.B.P.以前であることが確実であり,そのうち約2000y.B.P.前後である可能性が高いこと,その一回前の活動時期は,栃窪において約12000y.B.P.以降,約9500y.B.P.以前であることが明らかとされ,このことから,双葉断層の北部区間における活動間隔は約7500年〜約10000年となる。また,上記の最新活動及びその一回前の活動における鉛直方向の単位変位量は,いずれも0.5m〜0.65m程度であることが確認され,この値と活動間隔とから,鉛直方向の平均変位速度は,0.087m/103年〜0.05m/103年と算出されている。平成10年度においては,双葉断層の北部区間における残された課題,すなわち,横ずれ量を含めた単位変位量・平均変位速度の解明,また,南部区間における断層の活動性の確認を目的に,ボーリング調査・トレンチ調査を実施した。その結果,北部区間においては,信頼性及び精度の高いデータによれば,最新活動 における変位量は,鉛直方向が約60cm,左横ずれによる水平方向が約1.5mであること,最新及びその一回前の2回分の累積変位量は,鉛直方向が約1.1m,左横ずれによる水平方向が約2.8mであることが確認された。これらのことから,左横ずれ量を含めた単位変位量は,最新活動では約1.6m,最新及びその一回前の2回の活動の平均では約1.5mとなり,これらの値から想定される地震規模は M=7.0程度と算出される。また,左横ずれ量を含めた平均変位速度は,上記の単位変位量及び活動間隔から,0.21m/103年〜0.15m/103年となる。双葉断層の南部区間では,平成8年度に実施した空中写真判読結果及び地表地質調査結果により,後期更新世以降における活動がないことを示す地形・地質的データが得られており,トレンチ調査を実施した大熊町山神においても,双葉断層は約8万年前の地層に変位を与えていないことが直接確認され,双葉断層の南部区間では双葉断層の後期更新世以降における活動がないことが明らかとなった。