Aボーリング調査No.4孔では25mの掘削によって低位段丘U面の堆積物を確認し、年代測定のための試料を採取した。この調査位置では、上盤側での基盤深度はやや深いと判断され、より北側に累積変位の大きい断層が存在する可能性が考えられる。
Bボーリング調査No.5孔では100mの掘削を行ったが、基盤岩を確認するには至らなかった。しかし、コア中には火山灰層が確認され、これらの同定・対比によって中位段丘面を形成する砂礫層の断層を挟んだ高度差が求めらた。このことから、中位段丘面形成後の平均変位速度は断層全体では0.7〜0.9m/1,000年であることが明らかとなった。
Cピット調査は3,4,5,7を実施し各ピットで堆積物中もしくはこれを覆う地層から年代測定用の試料を採取した。ピット6については事前のハンドオーガー調査から断層の存在が疑わしいためピット調査の実施を中止した。この地点では断層想定位置を挟んだ位置で北側では1.2mで基盤に到達し、南側でも1.8mで基盤岩に到達する。このことから、少なくとも累積変位が大きい主断層が極めて新しい時代(完新世)に活動した可能性は低いと思われる。また、ピット7でも砂礫層に不整合に切られる塊状の軽石粒混じりシルト岩(風化が進んだ基盤岩の可能性がある)が観察されいる。
D各ピットで求められた年代からは、各段丘面の正確な形成時期を限定するには至らなかったがピット5では堆積物中の深度2.5mに姶良−丹沢火山灰(約25,000年前)が確認されこの堆積物のつくる平坦面が低位段丘U面とすることができた。また、ピット4で見られる砂礫層は、トレンチ調査で確認されたC層に対比される。ピット7で確認された砂礫層は、これを覆う腐植層がトレンチのC層と同時期に形成されたことが明らかとなっ たが礫層の直接の年代を限定するには至らなかった。
Eピット3では上部に砂礫層が見られこれが段丘面を形成する地層と考えられるが、この砂礫層の年代は限定することはできなかった。この下位の腐植質シルト層からは約30,0 00年前の年代が求められており、この段丘がこれよりも新しいことは確実である。
Fピット5で確認されたAT火山灰と同時期の堆積物がボーリング地点No.2孔の深度6m付近とNo.3孔の深度7m付近で確認された。ピット5地点のAT層順とNo.3深度7mではの約16mの高度差があり、低位段丘の傾斜(ピット5から南へ100mの区間の傾斜)が段丘本来の傾斜であるとするならば、AT層順の高度差は12m程度とすることができる。この高度差が断層による変位とするならばこの地点の平均変位速度は12〜16m/25 ,000年=0.48〜0.64/1,000年となる。