(2)ピット2−1,2−2

ピット2−1はaT段丘の低い断層崖の上側で掘削した。ピット内の地層は表土,A層,B層,C層,D層,E層およびF層の7層に区分される段丘堆積物からなる(図3−2−11)。A層は礫径1〜10cmの礫層で、亜角〜亜円礫よりなる。基質は褐色の極細粒砂である。B層は礫径1〜10cmの礫層で、亜円礫よりなる。チャネル状の堆積構造を示す。C層は淡灰色の中粒砂層で極粗粒砂の薄層を挟在する弱腐植質である。

D層はD1,D2の2層に細分され、D1層は暗褐色の腐植質中粒砂混じりシルト層からなり、D2層は淡灰色の弱腐植質中粒砂まじりシルト層からなる。E層は礫径1〜15cmの礫層で、亜角〜亜円礫よりなる。基質は淡褐色〜赤褐色の極細粒砂からなる。F層は暗褐色の腐植質極細粒砂〜シルト層である。上部はよくしまっており、下部は礫径1〜15cmの亜角〜亜円礫を多く含む。

この堆積物のうち、B層では5,980±60y.B.P.,F1層では8,250±110y.B.P.,G層では9,270±100y.B.P.の年代値が得られた。また、この地点の120m西側の露頭OM−1では地表の平坦面から1.2m深さの堆積物から8,100±110y.B.P.の年代値が得られている。

ピット2−2はaT段丘の低い断層崖の下側で掘削した。ピット内の地層は表土,A層,B層,C層およびD層の5層に区分される段丘堆積物からなる(図3−2−12)。A層は暗褐色〜灰色弱腐植質礫混じり細粒砂層である。B層はB1〜3層に細分される。B1層は礫層からなり、亜角〜亜円礫よりなる。基質は褐〜赤褐色の細粒砂よりなる。B2層は褐〜赤褐色の極粗粒砂よりなり、チャネル状にピット内の一部に分布する。B3層は礫層で、基質は褐色の砂からなる。C層は淡灰〜淡褐色の細粒砂からなり、一部に中粒〜粗粒砂が挟まる。D層は上位よりD1〜3層に細分される。D1層は灰白色粘土層よりなる。D2層は灰色の弱腐植質粘土層よりなる。D3層は灰白色粘土層よりなる。

このピットではB層から3,650±80y.B.P.の年代値が得られ、E2層から6,400±80y.B.P.の年代値が得られた。

測量結果から、図3−2−1に示した低位段丘Vには山側の断層崖で4±1mの高低差が認められ(測線D−E)、これに連続する扇状地では測線A−Bにおいて5m前後の高度差が認められた。沖積段丘T面に区分したA−C測線ではピット(P2−1)掘削位置付近に2〜3m程度の高度差を読み取れる傾斜変換部が出現するが、これ以外には変位によると判断される高度差・傾斜変換部は見られない。

以上の調査結果から、大笹生トレンチで確認された断層の延長部では、約8,000年前〜6,000年前に形成された地形には2〜3m程度の変位しか認められないのに対し、この地形面に侵食されるか、もしくは上位に位置する段丘面ではトレンチで確認された変位量にほぼ等しい高度差が確認される。このことは、トレンチ法面で想定された複数の断層活動のうち、最終活動だけが約8,000年前〜6,000年前に形成された地形に記録されており、これ以前に形成された段丘面には、複数回(2回)の断層活動が記録されていると考えられる(図3−2−13および図3−2−14)。