Fa断層の上盤側ではこれに接するN層およびM層に著しい変形が見られる。特に北側〜西側法面にかけては、M層が60°を超す傾斜をもっていることが観察された。また、この上位に位置するL層では北側法面上段において波状の変形をもっていることが観察される。この波状の変形は北側法面の一部に見られるK層,J層にも連続する。これに対してFa断層下盤に見られるJ,K層およびより下位の地層には大きな変形は観察されない。
Fa断層は、西側法面ではJ層以下の地層を切り、B層によって覆われていることが確認されるのみであるが、東側法面ではJ層を確実に切り、J層を不整合に覆うI2層およびI3層を切っていると判断され、「奈良・平安期」の土器片を含むI1層およびこの上位の地層に覆われている。
Fa断層の示す走向傾斜は、東側法面ではN50°E,20Nと緩やかであるが北〜西側法面では末端部は低角であるがより山側ではN40°E,45Nとなっている。断層の上下ではK層上面に約4mの高度差が確認でき、M層では変形の最も大きな部分で約6.5mの高度差が確認される。
Fb断層は、トレンチで確認されるJ層以下の地層を切っていることが確認された。断層面沿いでは地層の引きづりや上盤側では地層に撓みや変形がわずかに見られる。西側法面ではFa断層同様J層以下の地層を切りB層によって覆われているが、東側法面ではG層によって直接覆われている。G層下位のH層とFb断層との直接の関係は明らかではないが、H層には下位のJ層に見られる変形が連続しないことから、H層は断層を覆う地層と判断される。
Fb断層の走向傾斜は東側法面ではN85°W,30Nを示し、西側法面で分岐した部分ではN60°E,25Nを示す。断層の上下では各地層の高度差が40〜80cmとなっており、地層ごとの変化はほとんどない。従ってトレンチで観察される地層の高度差は最大で7mに及ぶ。
Fc断層およびFd断層は、Fa断層の上盤に見られるM,N層中に観察されるが、連続性および地層の変位量について充分な資料を得られていない。このうちFc断層はN層中に連続するものでFd断層はN〜M1層に地層の変形が現れている。
ここで確認された断層面のうち、Fa断層はJ層およびこれより下位の地層を切りI3,2層を変形し不明瞭ながら切っている可能性高いが、I1層にはこの断層の延長は見られずG層は切られていない。Fb断層の末端はJ層を切ってG層に直接覆われる。ここでG層に覆われるH層は断層面との直接の関係は明らかではないが、断層に接近する部分にも、下位のJ層やL層に見られる変形は見られないため、H層は断層によって切られる地層ではないと判断した。
以上のことから、この断層の活動時期はI2層の堆積(2,060±50y.B.P.)以降,H層堆積時(950±50y.B.P.)以前もしくはI1層堆積時(奈良・平安期の土器片を含む)以前であり、これがこのトレンチで確認される最も新しい断層活動=最終活動(イベントT)であると判断した。