(2)電気探査(比抵抗映像法)結果

電気探査は、福益地区の西袋田ため池へ向かって山地内から北へ延びる東西2箇所の谷で、北へ向かって展開した2測線(各々延長100m、距離間隔1m)に沿って実施した。調査結果を図3−4−2−3に示す。

本地区の地盤の比抵抗値は、概ね275Ω・m以下である。A測線の距離60〜95m付近の表層に分布する厚さ1〜2mの比抵抗値200Ω・m以上の部分(色調:黄〜赤)を除いて、両測線とも全般的に深部ほど高い比抵抗となっている。B測線では、高い比抵抗値(200Ω・m以上、色調:黄〜赤)が出現する深度が起点側(山側)で浅く、終点側にかけて徐々に深くなる傾向が見られる。後述するボーリングやトレンチの結果と合わせて検討すると、B測線で見られる高い比抵抗値の部分は基盤に、上位の低比抵抗値の部分は沖積層ないし新期扇状地堆積物に相当すると推定される。A測線では比抵抗値と分布地質との対応があまり明瞭ではないが、これは地下水位がかなり浅いことの影響と思われる。断層周辺では水平方向に比抵抗値の変化が見られると想定すると、比抵抗分布からみて、断層が存在する可能性のある場所として次の箇所が抽出される。

・A測線

@ 距離55m付近  :地表から深度2mまでの浅部において、起点側の低比抵抗部(150Ω・m以下、色調:青〜紺)と、終点側の高比抵抗部(200Ω・m以上、色調:黄〜赤)の境界となっている。

A 距離72m付近  :深度2〜11mにおいて起点側で、中比抵抗値(150〜200Ω・m、色調:緑)であるのに対し、終点側は深度2〜5mで低い比抵抗値(150Ω・m以下、色調:青〜紺)、深度5〜11mで高い比抵抗値(200Ω・m以上、色調:黄〜赤)を示す。

・B測線

B 距離23〜28m付近:地表から深度約2mまでの浅部で、周辺と比較して低い比抵抗値(200Ω・m以下、色調:緑)を示す。

C 距離36〜46m付近:地表から深度約5mにかけて、周辺と比較して相対的に低い比抵抗値(200〜225Ω・m以下、色調:黄)の部分が斜めに分布している。

D 距離50m付近  :地表から深度約3m間での浅部において、起点側の高比抵抗部(200Ω・m以上、色調:黄〜赤)と、終点側の低比抵抗部(200Ω・m以下、色調:緑)の境界となっている。

E 距離73m付近  :深度3〜8m間において、起点側の高比抵抗部(150〜200Ω・m以上、色調:黄〜赤)と、終点側の低比抵抗部(150Ω・m以下、色調:緑)の境界となっている。

当初はこれらの位置に断層を推定し、ボーリング、トレンチ掘削を行ったが、後述するようにボーリングやトレンチ調査では、上記の各区間では断層を確認することはできなかった。

このことから見ると、比抵抗の横方向変化は、地山中の含水状態の相違に起因したものと考えざるを得ないが、γ線探査でもこれらの位置に近いところで異常値が検出されており(第Y編A参照)、トレンチ等では明確に現れないものの、基盤や深部のやや古い堆積物を変位させている断層が存在する可能性は完全には否定できないと思われる。