(8)考古物分析結果

本トレンチでは、盛土及び第1層から須恵器・土師器などの小片が出土した。

出土遺物を図3−4−1−12に示す。各遺物についての鑑定結果は次の通りである(松村委員による)。

・盛土層

土師器杯・小皿の小片約10点の出土を見たが、いずれも摩滅が著しい。1は杯で、体部は内灣気味に立ち上がる。底部は回転ヘラ切り。復元口径は14.6p、器高3.0p、底径10.0pである。1/4残。

2は杯の底部で、体部を欠損する。底部は回転糸切りである。

・第1層

3・4は土師器杯の口縁部で、内外面ともにナデ調整を施す。色調は明褐色、焼成は良好である。

5は須恵器瓶の胴部で、外面は正格子文の叩きを施した後摺り消し、また、内面は青海波文の叩きを施す。焼成は良好である。

小片のために図示できないが、他に多数の土師器片、丹塗りの土師器なが出土している。丹塗りの土師器は7世紀後半〜8世紀前半頃の杯の口唇部と考えられる。

〔所  見〕

出土遺物はいずれも遺溝に伴うものではなく、二次的に包含されたもである。盛土層出土の土師器杯は、形態・法量から平安時代後期に属するものであるが、底部がヘラ切り手法であることから少なくとも糸切り手法の出現以前、すなわち12世紀前半以前の所産と考えられる。また、第1層出土遺物からみて、おおよそ7世紀後半から8世紀にかけての時期に比定される。

以上の結果から、トレンチに出現する各地層の時代についてまとめると表3−4−1−5のようになる。

表3−4−1−5  トレンチに出現する地層の年代

2).まとめ

以上述べてきたように、宮園地区のトレンチ調査では基盤上面を平地側へ急激に低下させている断層が確認された。ただし、200,000年以前と推定されるは、断層によって切られていることが確認できたが、新期構成層に相当する地層(AT火山灰包含層)を変位もしくは切断しているかどうかは確実には認定できなかった。しかしながら、少なくともAT火山灰包含層以前の 地層は、断層付近から平地側へ向かって10゜前後で傾斜しており、また、AT火山灰包含層とその上位の地層は地すべりに似た変位を受けており、23,000〜25,000年BP以降にこれらの地層を変位もしくは変形させる何らかのイベントがあった可能性は高い。加えてボーリング調査からもAT火山灰に変位を受けていると判断される。表層部の12世紀の盛土層が変形を受けていないことからみて、このイベントは900年BP以前と推定され、既往文献に示された西暦679年の地震活動の反映である可能性がある。

また、ボーリング、物理探査結果等をあわせて考えると、この山側の断層より平地側にも断層が存在すると推定され、今回確認された断層と、それに伴う地層の変形はより大きな地質構造の一部と位置づけられる。なお、ここで得られた断層変位量等の断層活動のパラメーターについては5章で詳細に検討する。