(2)反射法弾性波探査

深度数100m付近までの地下深部の構造を把握するために、福益地区のJR線筑後吉井駅東側から福富小学校を通り、水縄山地を南北へ延びる道路上でP波を用いた反射法弾性波探査を実施した。図3−2−4−7に測線位置を示す。

解析結果は図3−2−4−8の時間断面図、図3−2−4−9の深度断面図、図3−2−4−10のスタック速度断面に示した。

時間断面図では、距離800〜900m付近を境に反射波の形状が大きく変化する。この付近より起点側(山側)では、時間100〜200msの間で反射波が得られているが、他では得られていない。一方、終点側では、時間100〜600msの間明瞭で連続性のよい反射波が数多く検出されている。特に時間250ms前後、500ms前後の反射波は明瞭で連続性がよい。

これらの反射面は山側へ傾斜し、かつ深部のものほどその傾斜が大きい。これは、地質構造的には県道よりやや平地側に平地側落ちの正断層が存在し、平地側の地層はこの正断層の運動によってひきずられた構造を示し、かつその変位量は地下深部の古い断層程大きいとして解釈される。既存ボーリングデータ※を含めた周辺の地質状況から解釈すると、測点800〜900mより山側の表層付近から最深部までを占める明瞭な反射面を持たない地層は、山地をつくる基盤の変成岩と考えられるが、この基盤上面は平地側では捉えられておらず、標高800mよりさらに深い位置にあると思われる。反射面を多数有すること等から見て、基盤の上の地層は、浦田(1985)※※がとりまとめた本地域の第三系区分に従えば、鮮新統の久留米層(礫〜礫層主体)と思われる。

このように重力及び反射法弾性波の両探査結果は整合的であり、どちらの結果でも、この地域では地形的に判読されたリニアメントよりやや平地側に、基盤の最大低下をもたらす断層が存在していることが示されている。また、盤岩上面の低下量の評価も800m程度ないしそれ以上で同程度である。さらに、この結果は今回の調査にあわせて、研究として実施されたCSAMT深部構造把握のための電気探査の一種)からも支持されている(応用地質(株)と九州大学・茂木先生の共同研究 第Y編A参照)。

また、久留米市宮園地区付近でも同様に、山麓よりやや平地側に大きい断層が存在するデータが重力探査CSMTによって得られている(茂木先生による調査、第Y編A参照)。これらの方法で推定された断層によると思われる基盤上面の低下量は約1,000mであり、近傍で久留米市によって実施された温泉ボーリングでも、山麓より約400m低地側で地表からの深度970m付近に基盤上面が確認されている(茂木先生による御教示)。

※1/50,000 表層地質図「甘木」(国土地理院.1979)のデータを利用した。

※※浦田英夫(1985)「福岡県久留米−黒木地域新第三系再論」九大教地研報24号