(1).長波長成分重力分布
@ 調査地の西側半分は水縄断層の東端部を含む範囲である。この部分においては、水縄断層を境として南側で高重力異常、北側で低重力異常のパターンが顕著に認められる。その重力の高低差は10m Gal強であり、水平方向の重力変化は10mGal/1qと大きい。
A 一方、調査地の東半分でも西側半分と同様の傾向が認められるが、重力の高低差は5mGal弱と小さい。
B 以上の特徴は、水縄断層の基盤の垂直方向の低下量が東側に向かって小さくなっていることを示していると思われる。
C 調査地中央より北側に見られる低重力異常域は、筑後川の流路が北方へ迂回している状況と調和的であり、この川による基盤の浸食がかなり深い(古い)構造に影響していることを示しているように見える。
(2).重力鉛直1次微分分布
長波長成分重力分布に見られる諸特徴が、よりシャープに認められる。特に、調査地中央より西側で重力鉛直勾配のコンターが密集しており、構造の急変を示している。この位置は航空写真で判読したリニアメントの位置より、かなり北側である。東方に向かってこのようなコンターの密集傾向は小さくなるが、これは地形的なリニアメントが東方へ次第に不明瞭になっていくことに対応しているように見える。
(3).重力基盤構造
@ 重力基盤構造から見ると調査地西側半分においては、水縄断層を境として北側が800m程度落ちた構造となっていると判断された。一方、東側側半分では、基盤の低下量は200〜300m程度と推定される。
A 重力基盤をベースとして、正断層型、垂直断層型、逆断層型の3ケースについてモデル計算を行ったところ、正断層型(断層面傾斜60゜で計算)では実測重力値と計算重力値がかなり一致しているが、垂直断層型さらに逆断層型になるにつれて、両者の食い違いが大きくなる結果となった。すなわち重力探査結果の解釈としては、水縄断層系は正断層型と見る方がよいと考えられる。