1−5−5 トレンチ掘削調査

各断層系の活動履歴に関するデータを得るため、断層の通過地点においてトレンチ掘削調査を行った。

1) 調査地の決定

トレンチ掘削実施位置は、各種物理探査やボーリング調査の結果等から総合的に判断して、活断層委員会および研究会と協議の上決定した。

 

2) 調査方法

(1)作業手順

1)用地のトレンチ掘削は、概ね以下の手順で実施した。境界を定め、耕作土を保管する。必要に応じ、舗装の剥離や水路の移設を行う。なお、具体的な作業内容については予め活断層委員会及び研究会と協議を行う。

2)トレンチを掘削する。

3)トレンチ法面を手作業により平滑に整形する。

4)整形した法面に1mメッシュのグリッドを設ける。

5)法面の地質を詳細に観察し、正確にスケッチする。

6)法面に現れた腐植土、火山灰、考古学的遺物等の試料を採取する。

7)平板測量によりトレンチの平面図を作成する。

8)トレンチを埋め戻し、用地を復旧する。

(2)作業内容及び作業に当たっての注意事項

1)調査用地の設定:監督官の指示により、調査用地内にトレンチ掘削用地及び掘削残土置場等の作業用地を設定する。境界地点にあたっては正確に復旧できるように杭等で目印を付ける。

2)トレンチの規模:掘削深さは調査目的を達成する深度とし、この深さにあわせて掘削巾、法面勾配等を決定した。必要に応じて観察用小段を取り付けた。

3)掘削残土の保管:掘削残土は雨により流れ出したり、崩壊の危険がないように、また同時に、トレンチの埋め戻しに支障を来さないように、ビニールシートをかけるなどして適切に保管した。耕作土と一般土は、分別保管した。

4)排水:トレンチ中の湧き水は水中ポンプを用いて排水した。排水に当たっては集水溝や水田への砂泥流入等の公害が発生しないように、万全を期した。

5)トレンチ法面の整形:掘削したトレンチ法面は、地層の詳細な観察ができるように、人力で余分な土石を除去し平滑に整形した。

6)グリッドの設置:整形したトレンチ法面には、観察及びスケッチの座標として1mメッシュのグリッドを設けた。

7)トレンチ法面の観察及びスケッチ:以下の点に留意して実施する。

A)スケッチの範囲は原則として活断層委員会及び研究会の指導により定め、スケッチの縮尺は1/10〜1/20とした。

B)観察は、肉眼で識別でき、かつ所定の縮尺でスケッチに表現できる精度の単層毎に地層を区分し、単層毎の層相、変形構造、堆積構造、地層境界の形状、層位関係、断層・亀裂、動植物遺体、液状化後、考古遺物等について詳細に行う。

C)観察結果を正確にスケッチするとともに、スケッチに注記をする。スケッチは原則として数グリッドが終了した時点で、活断層委員会及び研究会に提示し、その承認を得てから次のグリッドのスケッチに進むものとする。

D)単層間の不整合、単層と断層との切られた・覆ったの関係、層準による変形の違い等を総合的に判断して、断層活動が生じた層準(イベント層準)を認定し、その層準をスケッチに表示する。なお、露出した断層については、活断層委員会及び研究会の指導を受けて、接着剤等を使用してはぎ取り標本を作製する。

8)試料採取:活断層委員会及び研究会の指導により、以下の各種試料を採取した。採取した試料は採取位置・試料番号等を明記したチャック付きのポリ袋に収納した。またスケッチに試料採取位置と試料番号を記入した。

A)14C年代測定用試料(材、木片、腐植土等)

b)テフラ及び火砕流試料

c)考古遺物

9)トレンチ平面図の作成:

平板測量によりトレンチの平面図を作成した。トレンチの周囲5m以内の地形は、これも併せて表示する。縮尺は、1/200とした。

10)現場管理:調査用地の保全及び安全管理を充分に行うものとし、特にトレンチ周囲にはロープを張り、関係者以外のものが無断で立ち入らないようにした。また、降雨等により法面が崩壊する恐れがある場合には、法面をビニールシートで覆い崩壊を防ぐことに努めた。

11)調査用地の復旧及び撤収:

トレンチの埋め戻しは、掘削残土を転圧して充分に突き固めながら慎重に行った。埋め戻し後は直ちに仮設物・重機等を撤去し、調査用地を原型に復旧する。