F−1
福井地震断層については、福井地震直後の測量により、2mの左横ずれおよび70cmの東側隆起の変位が確認され、左横ずれが卓越することが明らかとなっている。なお、断層変位は地形的には残されていない。
P波弾性波探査を実施した結果、測線2,000m付近で基盤および第四紀の地層に対比される反射面は西側に比べ東側が相対的に高くなっており、変位の鉛直成分としては東側隆起の断層センスが示唆された。
また、P波反射断面では第四紀の地層に対比されると考えられる反射面に上下数10mの変形が読み取れ、下位のものほど変形の程度が大きくなっていることから、地震活動の繰り返しによる変形の累積性が示唆された。しかしながら、ボーリング調査およびP波探査から、地下浅部では地層の顕著な変位・変形は認められなかった。
以上のことから、福井平野の地下深くには、過去に基盤上面および第四紀層をくり返し変位・変形させたF−1に相当する断層が伏在しているものの、その変位・変形は地下浅部までは及んでいないことが明らかとなった。断層変位のセンスに関しては、福井地震後の測量の結果から、東側隆起の鉛直成分を伴う左横ずれが卓越することが示唆される。
F−2
本断層は、過去に相当する断層の報告がなく、今回の調査により新たに存在が示唆された断層である。断層変位を示す地形も残されていない。
P波弾性波探査を実施した結果、測線3,200m付近で基盤および第四紀の地層に対比される反射面は西側に比べ東側が相対的に高くなっており、変位の鉛直成分としては東側隆起の断層センスが示唆された。変位の横ずれ成分は不明である。また、P波反射断面では第四紀の地層に対比されると考えられる反射面に上下数10mの変形が読み取れ、下位のものほど変形の程度が大きくなっていることから、地震活動の繰り返しによる変形の累積性が示唆される。しかしながら、ボーリング調査およびP波探査から、地下浅部では地層の顕著な変位・変形は認められなかった。
以上のことから、福井平野の地下深くには、過去に基盤上面および第四紀層をくり返し変位・変形させたF−2に相当する断層が伏在しているものの、その変位・変形は地下浅部まではほとんど及んでいないことが明らかとなった。その断層センスは、東側隆起の鉛直成分を持つことが示唆されたが、水平成分については不明である。
F−3
本断層は、小笠原(1949)の推定した東側の深部断裂、並びに活断層研究会編(1980、1991)による福井東側地震断層に相当する。
小笠原(1949)は、推定した東側の深部断裂について、篠岡付近に分布する小丘部の西端に認められた西上がりの逆断層露頭、並びに扇状地面および段丘面の逆傾斜のほか、福井地震発生直後に実施された精密測量の結果、福井から大聖寺に至る水準測量路線に沿って福井地震断層を境に隆起した東側の地域のうち、深部断裂の分布位置付近でやや沈降傾向が認められるとして、これらの変形を西側隆起の逆断層活動に対応するものとした。また、活断層研究会編(1980、1991)は、福井東側地震断層について、小笠原(1949)に基づき西側隆起としているが、篠岡断層については地形学的な判断から東側隆起としている。
空中写真判読および現地踏査の結果、篠岡断層に対比されるリニアメントを境に東側に分布する小丘では基盤の露出が認められ、全体として東側隆起の断層センスが示唆された。
リニアメントに沿っては、沖積面上に直線状のわずかな高まりが見られたほか、リニアメントの西側に低位段丘面の逆傾斜が認められた。逆傾斜する段丘面を覆う風成層中からはDKPが抽出されたことから、この段丘面を変形させる断層運動は5万年前以前から継続的に活動していることが示唆された。
なお、篠岡断層の北側延長に位置する細呂木断層、並びに南側延長に位置する松岡断層に各々相当するリニアメントに沿っても、新期の地形面に東側隆起の撓曲崖、低崖等の変形が認められているが、いずれも横ずれの変位は認められない。
P波反射法弾性波探査では、測線距離程4,700〜5,200m付近において、基盤および第四系に相当する反射面に明瞭な東側隆起の変位および変形が示唆された。その変位量は、基盤である新第三紀層の上面境界で最大約70mに達すると見なすことができるが、第四系内の反射面の変位は不明瞭で、変位の累積性については把握できない。
S波反射法弾性波探査においても、基盤深度が東側で浅くなる状況が認められた。測線中央部付近を境に西側に基盤岩、東側に第四紀層の分布が推定されるが、第四紀層中には明瞭な断層変位は捉えられていない。S波側線沿いで実施したボーリング調査の結果、第四紀層の上部にF−3に対応する明瞭な断層変位は認められなかった。また、トレンチ調査の結果、1948年の福井地震断層に対応する断層変位は確認されなかった。
以上のことから、福井平野の東縁にはF−3に相当する断層が存在し、5万年前以前から継続的に活動しており、その変位・変形は地下浅部まで及んでいるものと考えられる。その断層センスは、東側隆起の鉛直成分を持つことが示唆される。なお、変位の水平成分については不明であるが、本断層の延長に相当するリニアメントの変位地形から、横ずれの変位は顕著ではないと推察される。
極地表部に関しては、今回実施したトレンチ掘削調査では断層変位は認められなかった。