@ ボーリングによる地層の層序
ボーリングの位置を図2−12に示し、調査結果を表2−4−1、表2−4−2、表2−4−3、表2−4−4、表2−4−5、表2−4−6に示す。S−2〜S−6の各孔では、基盤である浄法寺累層を確認した。基盤を覆う第四系は、シルト、砂および礫からなる。これらの地層は、層相、テフラ分析結果並びに14C年代測定結果に基づき、大きく3層に区分される。
テフラについては、S−1の深度10.1m付近で確認された細粒のガラス質火山灰の純層(ガラスの屈折率からATに対比)のほかは肉眼では確認できなかった。このため、第四紀層から連続的に試料を採取し、火山灰起源の鉱物(主に火山ガラス)の抽出および含有量の検討、並びにガラスの含有量ピークを識別した層準についてガラスの屈折率を測定した。その結果、ATおよびDKPが検出された。なお、K−Ahについては、ガラス含有量の分布が幅広く、狭いピーク幅で確認できないことから、降灰層準を特定できなかった。
確認された地層の層相および年代試料分析結果を表2−5に整理し、以下にその特徴を示す。
シルトおよび砂互層(T層)
砂質シルトおよび砂を主体とする互層。青灰色〜暗褐色〜黒色を呈する。部分的に腐植質で、層相および年代測定結果から、T−1層およびT−2層に細分される。
T−1層は、K−Ah降灰層準を含み、基底部に腐植質シルト〜細粒砂を伴う。S−1およびS−2で採取したT−1層基底の腐植質シルトについて14C年代測定を実施した結果、各々8,217±68y.B.P.、8,443±62y.B.P.の放射年代を得た。したがって、T−1層とT−2層の境界は、およそ8,500年程度前と想定することが可能である。
T−2層はS−1で主に認められ、AT降灰層準を含む。S−1の深度10.1mにおいては肉眼で識別できる火山灰が挟在され、ガラスの屈折率からAT(約2.2〜2.5万年前に降灰)に対比できる。S−2、3、6については、肉眼では識別できないが、鉱物組成分析により火山ガラスの多産層準が識別でき(S−2:6.0m付近、S−3:5.2m付近、S−6:5.3m付近)、それらは屈折率からAT起源であると考えられる。本層はT−1層よりやや砂質で、基底部は細粒堆積物(シルト〜砂)を伴う。S−2では、T−1層基底部のシルトがAT直上に分布するほか、S−6ではATの降灰層準直上に5,072±58y.B.P.の放射年代を示す腐植質シルトが認められ、また、S−6以東ではU層との境界付近にAT降灰層準が位置することから、T−2層の層厚はS−2以東でごく薄くなり、S−3以東ではほとんど分布しないと考えられる。両層の間には著しい不整合は認められず、AT降灰期の少し前から連続〜断続的に堆積した扇状地堆積物(主に完新統)と考えられる。シルトおよび砂には、安山岩からなる亜角〜亜円礫が含まれる。部分的に腐植質で、固結度は低い。
砂および砂礫互層(U層)
砂および砂礫からなる互層。暗褐色〜黄褐色を呈し、T層より粗粒な部分が多い。礫は亜角〜亜円礫で、礫種は安山岩礫主体、他に凝灰岩礫を含む。S−1およびS−2の中〜下部(S−1:17.0〜17.1m、S−2:7.7〜9.0m)からは、類似した屈折率を示す斜方輝石および自形で新鮮な短冊状緑色普通角閃石が多く検出され、これらはその特徴からDKP降灰層準である可能性が示唆される。
砂および砂礫互層(V層)
砂および砂礫からなる互層。U層とは、安山岩礫のほか、花崗閃緑岩、砂岩等からなる礫を含むこと、礫の径がやや大きく円磨度が高いこと等から区別される。S−1およびS−2においてのみ確認された。
基盤(浄法寺累層)
凝灰岩〜凝灰角礫岩。部分的に軽石質で、弱い溶結構造、流理構造等が認められる。一部(S−3の27m以深)を除き、小断層および節理沿いに風化・鉄汚染が進み、全体に著しく軟質であるほか、部分的に粘土〜土砂状を呈する。特に、S−2においては、基盤岩全体が破砕している。
A ボーリングから想定される地質構造
ボーリング調査の結果、S−2孔より東側で確認される基盤(浄法寺累層)は、S−1孔では確認されず、S−1孔とS−2孔の間に断層が分布する可能性が示唆される。しかし、上位の第四紀層中の鍵層であるDKPおよびATについては、その出現深度が西に向かって深くなり、S−1孔とS−2孔間で急斜する傾向が認められたものの概ね連続して追跡可能であり、明瞭な断層変位は認められない。
また、S−2孔とS−6孔の間においても基盤上面の分布深度に若干の差が認められたが、U層より上位の各地層境界および鍵層の分布に変化は見られず、U層堆積時以降の新期の断層活動による変形は認められない。
各孔で確認された層序区分に基づいて作成した推定地質断面図を図2−13に示す。