(5)福井地震断層に対する調査結果のまとめ

以上の結果を総合すると、いわゆる福井地震断層に関しては以下のように取りまとめることができる。

@ P波反射法弾性波探査の結果、小笠原(1949)の示した西側の「深部断裂」の位置に相当する地下深部において、基盤上面に東側隆起の鉛直変位が確認された(F−1)。

A このF−1に関しては、ボーリング調査およびP波反射法弾性波探査の再解析の結果から、地下浅部では地層の顕著な変位・変形は認められなかった。

B 福井地震時の地変が集中して分布する範囲の東端に相当する地下深部においても、基盤上面に東側隆起の鉛直変位が確認された(F−2)。この地下深部の変位は、今回の調査で初めてその存在が明らかにされたものである。

C このF−2についても同様に、地下浅部では地層の顕著な変位・変形は認められなかった。

D 以上のことから、いわゆる福井地震断層は、地表に明瞭な変位を伴う地震断層ではなく、小笠原(1949)のように「深部断裂」と呼ぶのが適切と判断される。

E この「深部断裂」の活動履歴に関しては、少なくとも第四紀層の一部に累積的な変形を及ぼしていることは明らかになったが、探査精度の制約から、それ以上のことは明らかにすることができなかった。