(1)ボーリングによる地層の層序

ボーリングの位置を図2−5に示し、調査結果を表2−1−1表2−1−2表2−1−3表2−1−4.、表2−1−5に示す。各ボーリングは、P−1およびP−2ではシルト〜砂が、P−3、P−4およびP−5では礫および砂が卓越し、側方への層相変化が著しい。また、テフラについては、P−1の深度8.8m付近で確認された細粒のガラス質火山灰(ガラスの屈折率より、K−Ahに対比)のほかは肉眼では確認できず、明瞭な鍵層は認められない。このため、地層の正確な対比が困難ではあるが、14C年代測定を実施した結果および層相変化を詳細に検討することにより、細粒の粘性土〜シルトを基準に、ほぼ似通った粗粒〜細粒〜粗粒のくり返しからなる堆積サイクルパターンを持つ層準に区分した。確認された地層の層相および年代試料分析結果を表2−2に整理した。以下にその特徴を示す。

シルトおよび砂互層(a1層)

シルトおよび砂からなる互層。P−1およびP−2では、下部でより細粒で、腐植質な部分を挟在する。P−1では、標高3m付近(深度3.50〜3.60m)に挟在する腐植質シルトから3,654±57y.B.P.の放射年代を得ている。また、P−2では、標高4.8m付近(深度3.00〜3.10m)に挟在する腐植質シルトから4,540±58y.B.P.の放射年代を得た。したがって、これらの14C年代測定の結果から、a1層とa2層の境界はおよそ5,000年前と想定することが可能である。本層は、層相および層準から、最上部泥層〜上部砂層(三浦、1988)の一部に相当する可能性がある。

細粒物質優勢互層(シルト〜粘性土および砂:a2層)

西(平野)側では細粒物質が優勢であり、東(丘陵)側のボーリングで認められる砂礫(ag層)とは指交関係と考えられる。P−1およびP−2では、頻繁に腐植を挟在する層厚約4〜5mの比較的厚いシルト〜粘性土が主体であり、下部より砂質シルト、シルトまたは粘性土、砂質シルトまたは砂が確認され、粗粒〜細粒〜粗粒の堆積サイクルが認められる。P−1では、標高約−2.4m付近(深度8.86〜8.89m)に、K−Ahを挟在する。P−3は主に砂からなり、P−4およびP−5で認められる玉石混じり砂礫を砂に挟在する。P−3およびP−4は下部境界付近に腐植を挟在し、下位層とはシルトの薄層により境される。P−5では、上位および下位との境界は不明である。層相および層準から、主に中部泥層(三浦、1988)に相当すると考えられる。

砂優勢互層(シルトおよび砂:a3層)

シルトおよび砂が主体であり、東(丘陵)側のボーリングで認められる砂礫(ag層)とは指交関係と考えられる。P−1およびP−2では、下部に層厚3m程度の砂が分布し、上部でシルトが優勢となる。シルト部分には腐植質を挟在する。P−1では、下限付近に挟在される腐植質シルトの薄層から8,271±61y.B.P.の放射年代を得た。P−3では玉石混じり砂礫および砂の互層、P−4では玉石混じり砂礫が主体であり、2孔とも最下部に層厚1m程度のシルトを伴う。P−3およびP−4では、最下部のシルト中に挟在する腐植から、各々7,154±77y.B.P.および7,130±60y.B.P.の放射年代を得た。P−2孔で確認されたg1層最上部の14C年代測定結果(後述)も踏まえた場合、g1層とa3層の境界はおよそ10,000年と想定することが可能である。P−5では、上位および下位との境界は不明である。層相および層準から、下部砂泥層(三浦、1988)に相当すると考えられる。

玉石混じり砂礫(ag層)

玉石混じり砂礫からなり、P−3、P−4およびP−5上部で確認される。a1〜a3層とは指交すると考えられる。礫は安山岩、閃緑岩等からなる円礫が主体で、基質はシルト質砂からなる。

玉石混じり砂礫(g1層)

全てのボーリングで認められ、玉石混じり砂礫からなる。基質は粗粒砂主体、礫は径1〜10cmの安山岩、閃緑岩からなる円礫主体である。P−2の上部約3〜4mでは、砂、シルトおよび砂礫の互層で、上限付近の腐植質シルトからは、11,167±71y.B.P.の放射年代を得ている。層相および層準から、第1礫層(三浦、1988)に相当すると考えられる。

砂・礫・シルト互層(d1層)

砂が優勢な砂・礫・シルト互層からなる。P−5で認められ、層厚は約15mである。

玉石混じり砂礫(g2層)

玉石混じり砂礫からなり、部分的に砂礫互層である。P−5で認められ、層厚は約50mである。礫は安山岩、凝灰岩からなる亜円〜亜角礫が主体で、基質は中〜粗粒砂が主体である。淘汰は悪い。

粘土(d2層)

青灰色〜暗灰色の粘土からなり、部分的に砂〜砂質シルトの薄層を挟在する。P−5で認められ、層厚は約15m弱である。

玉石混じり砂礫(g3層)

玉石混じり砂礫からなる。P−5で認められ、層厚は約15m強である。礫は安山岩、チャート、凝灰岩からなる亜円〜亜角礫主体で、基質は中〜粗粒砂が主体である。淘汰は悪い。

砂・粘土互層(d3層)

全体に青灰色〜暗灰色を呈する粘土および砂からなる互層で、粘土が優勢である。P−5で認められ、層厚は約30mである。下部約9mでは、砂および砂礫からなる互層となる。

凝灰岩(基盤)

P−5の149.25mにおいては、著しく風化して軟化し、シルト状を呈する凝灰岩が確認された。150.30m付近に凝灰岩の偏平な礫が混入するものの、塊状で均質であり、堆積構造は認められない。新第三紀の浄法寺累層に相当すると考えられる。