(1)地形面区分
1)坂井町付近
本地域においては、丘陵縁辺部に断片的に段丘面が分布する。なお、丘陵西縁を開析する沢には崖錐堆積物が小規模に分布するほか、丘陵頂部にはいくつかの定高性を有する尾根が連続する。本地域に分布する段丘面は、面の分布および性状からS1〜S5面に区分される。判読結果の詳細を図3−2−6に示す。
各地形面の特徴を表3−2−1にまとめ、以下に示す。
S1面
分布は権世川右岸に限られるが、連続性は良く、河川に沿って傾斜する。面は小規模で、わずかに開析されるが平坦面を残す。低位の面とは斜面で境される。面の分布標高は60m程度である。
S2面
権世川右岸に比較的広く連続した分布が認められる。面は、ほとんど開析を受けず、平坦である。面は河川に沿って傾斜する。低位の面とは明瞭な崖により境される。面の分布標高は30〜50mである。
S3面
権世川右岸に比較的広く連続した分布が認められるほか、北疋田東方の丘陵の西縁に本面に対比されると考えられる小規模な面が断片的に分布する。面の形態および分布から、海成面である可能性がある。面の分布標高はいずれも30〜40mである。
権世川沿いに分布する面は、権世川右岸の支谷を埋積し、沢により開析されるが、保存が良く平坦で、ほぼ水平である。低位の沖積面とは明瞭な崖により境される。
北疋田東方の丘陵部に断片的に分布する面は、面が小規模であることから、その形態および分布の詳細は不明であるが、面は平坦かつ水平である。また、本面と低位のS4面を境する段丘崖は丘陵と平野を境するリニアメントに一致するが、断層変位地形であるかどうかは不明である。
S4面
丘陵縁辺部に断続的に分布する。面は開析を受けず、平坦である。面の形態および分布から、海成面である可能性が高い。低位の面とは明瞭な崖により境される。面の分布標高は10〜20mである。
S5面(沖積面)
権世川沿いに広く分布するほか、竹田川沿いおよび南疋田東方の丘陵縁辺部にも断片的な分布が認められる。本面は河川の侵食による段丘化が進行している沖積面であり、河川上流部においては谷底面を形成し、平野近傍においては段丘の形態をなす。
権世川が丘陵から平野部に流れ込む北野北方において、本面上に傾斜変換点が認められるが、断層変位地形であるかどうかは不明である。竹田川沿いに分布する本面は、面の形態および分布から、後述のMr6面に対比されると考えられる。
2)丸岡町付近
本地域においては、丘陵縁辺部に小規模な段丘面が断片的に分布するほか、丸岡町東部の篠岡付近には、複数の段丘面により構成される小丘が南北方向に配列する。丘陵部からは扇状地面が広く発達し、一部の段丘面を覆う。また、本地域の丘陵の南部には空中写真判読により土石流堆積面の分布が認められたが、現在は著しく人工改変されていることから、その分布は現在の地形図からは確認できない。なお、坂井町付近と同様に、丘陵頂部にはいくつかの定高性を有する尾根が認められる。本地域に分布する段丘面は、面の分布および性状からMr1〜Mr6面に区分される。判読結果の詳細を図3−2−7、図3−2−8に示す。
各地形面の特徴を表3−2−2にまとめ、以下に示す。
Mr1面
篠岡東部の丘陵縁辺部に小規模な面が断片的に分布する。面の開析が進んで丸尾根状を呈し、わずかに平坦面を残す程度である。面の分布標高は50m程度である。
Mr2面
篠岡付近の小丘部に残丘状に分布するほか、丘陵縁辺部に小規模な面が断続的に分布する。面は平坦面を残す。低位の面とは緩い斜面で境される。面の分布標高は篠岡付近の小丘部では35m前後、丘陵縁辺部では40m前後である。
Mr3面
篠岡付近の小丘部に残丘状に分布するほか、丘陵縁辺部においては扇状地の発達する沢に沿って面の分布が認められる。面は平坦面を残す。低位の面とは明瞭な崖で境される。面の分布標高は篠岡付近の小丘部では30m前後、丘陵縁辺部では30〜40mである。
Mr4面
篠岡付近に分布する小丘を構成する。高位の面の周囲を取り巻くように分布し、後述の扇状地面(T面)に覆われる。面はわずかに浅い谷に開析されるが、平坦面を残し、背面はほぼ水平である。低位の面とは明瞭な崖で境される。面の分布標高は25m前後である。
北陸自動車道丸岡インターチェンジを載せる面は、空中写真からはやや逆傾斜しているように見えるが、現在は人工改変されており、その変形は地形図からは確認できない。
Mr5面
篠岡付近の小丘部に小規模な面が断片的に分布するほか、最も南に分布する小黒集落を載せる小丘を構成する。後述の扇状地面(T面)に覆われる。面はほとんど開析を受けず、平坦である。低位の面とは明瞭な崖により境される。面の分布標高は15〜20mである。
小黒集落を載せる面は西から東へ逆傾斜しており、西側隆起の断層活動に起因する変形である可能性が示唆される。
Mr6面(沖積面)
竹田川左岸に比較的広く分布するほか、九頭竜川右岸にも小規模な分布が認められる。本面は河川の侵食による段丘化が進行している沖積面であり、河川上流部においては谷底面を形成し、平野近傍においては段丘の形態をなす。河川上流部で後述の扇状地面(U面)を削剥し、末端を埋積する。本面は、面の形態および分布から、前述のS5面に対比される。
土石流堆積面
九頭竜川右岸の丘陵上に分布するが、現在は人工改変が進み、ほとんど確認できない。面は開析が進む。面の最高分布標高は、80m程度である。
扇状地面
本地域においては、丘陵部と平野部の境界から平野部にかけて、広く分布が認められる。本面は、丘陵を開析する複数の小河川および沢から発達した小扇状地面の複合であり、Mr4面およびMr5面を覆う急傾斜のT面と、T面を開析する谷を埋め、末端がMr6面下に埋没する緩傾斜のU面とに分けられる。
篠岡付近に分布する小丘の西縁では、本面上に南北走向の低崖および地形的な高まりが認められ、断層変位地形である可能性が示唆される。
3)松岡町付近
本地域においては、丘陵縁辺部に小規模な段丘面が断片的に分布するほか、九頭竜川左岸に広い段丘面の分布が認められる。丘陵部からは扇状地面が発達し、一部の段丘面を覆う。本地域に分布する段丘面は、面の分布および性状からMt1〜Mt4面に区分される(図3−2−5)。
各地形面の特徴を表3−2−3にまとめ、以下に示す。
Mt1面
丘陵部に小規模な面が断片的に分布する。面は小丘状を呈するが、平坦面を残す。面の分布標高は50〜60mである。
Mt2面
九頭竜川左岸に広い分布が認められるほか、西野中付近の丘陵部の閉塞した谷の中に小規模な面が断片的に分布する。
九頭竜川左岸に分布する面はほとんど開析されず、平坦で、低位の面とは明瞭な崖により境される。面上には東側隆起の断層変位と考えられる変形が認められ、段丘面の末端は一部沖積面下に埋没する。後述の低位扇状地面(T面)に覆われる。面の分布標高は20〜40mである。
西野中付近の丘陵部の閉塞した谷の中に分布する面は、小規模ではあるがほとんど開析されず、平坦である。分布標高は60〜80mである。
Mt3面
九頭竜川左岸に小規模な面が分布する。面は開析されず、平坦である。低位の面とは明瞭な崖により境される。後述の低位扇状地面(T面)には覆われない。面の分布標高は、35m前後である。
Mt4面
西野中付近の丘陵部の閉塞した谷の中に分布する。面は開析されない。一部は後述の低位扇状地面(U面)に覆われる。
高位扇状地面
岩舟付近の丘陵部に分布する。面は開析が進む。末端は低位の扇状地面下に埋没し、一般に急傾斜である。
低位扇状地面
岩舟付近の丘陵より平野部に比較的広く分布するほか、西野中付近の丘陵部の閉塞した谷の中を埋める。高位扇状地面を開析する谷を埋める。Mt2面を覆う急傾斜のT面と、Mt4面を覆う緩傾斜のU面に分けられる。
(2)リニアメントおよび変位地形
空中写真および地形図からは、丘陵部にいくつかのリニアメントおよび地形要素が判読される。それらを各々L−1(L−1−1、L−1−2、L−1−3)およびL−2(L−2−1、L−2−2、L−2−3)とする(図3−2−3、図3−2−4、図3−2−5)。
1)L−1リニアメント
L−1リニアメントは、坂井町付近の丘陵と平野の境界付近に認められるL−1−1リニアメント、丸岡町篠岡付近の小丘に認められるL−1−2リニアメントおよび松岡町付近の丘陵と閉塞谷の谷底面との境界付近に認められるL−1−3リニアメントに分けられる。各リニアメントはほぼNS方向で直線的に並ぶが、沖積面に覆われ、その連続は確認できない。
以下に、各リニアメント毎にその特徴を示す。
L−1−1リニアメント
本リニアメントの特徴をまとめ、以下に示す。リニアメント判読結果の詳細は、図3−2−6に示す。
@丘陵と平野との境界付近に認められるNS方向のリニアメントで、日活(1991)の細呂木断層に一致する。
Aリニアメントは、主に丘陵と平野の直線的な境界、傾斜変換点、低崖等の地形要素により構成される。
B低崖は、北野東方の沖積面上および北疋田東方(瓜生)の段丘末端部に認められ、東側が地形的に高い。段丘崖あるいは河川侵食により形成された崖である可能性もあり、変位地形であるとは判断できない。
C権世川が丘陵から平野部に流れ込む北野北方においては、S5面上に傾斜変換点の連続が300m程度認められる。
D北疋田東方の瓜生および後山から東山周辺においては、リニアメント東側に位置する谷の中に沖積面の分布が認められ、その標高は高い。北疋田周辺の沖積面の標高が10m以下である一方、瓜生北東の谷の中に小規模に残る沖積面の標高は30m、後山から東山にかけて谷埋め状に分布する沖積面の標高は35〜45mを示し、リニアメントを境に沖積面の標高が著しく異なる。
L−1−2リニアメント
本リニアメントの特徴をまとめ、以下に示す。リニアメント判読結果については、図3−2−7、図3−2−8のほか、図3−2−9にその詳細を示す。
@篠岡付近の小丘の西端からNNW−SSE〜NS方向に延びるリニアメントで、日活(1991)の篠岡断層を含み、福井東側地震断層の一部分に一致する。
Aリニアメントは、主に低崖および地形的な高まり等の地形要素により構成される。
B地形上の高まりは、河川(五味川)の流路にほぼ沿って認められる。その北端は城北東方で消滅し、南方は味岡山の西および篠岡の北西まで連続が認められる。
C高まりの両側は、旧河川による浸食が著しい。篠岡北西においては小規模な扇状地の張り出しが認められ、その北方には断層変位地形と考えられる低崖がわずかに残されている。この低崖は、米軍による1946年10月撮影の空中写真では認められるが、その後の写真では認められない。
Dその他、高まりの南方延長上に、丸岡町篠岡の小丘の西端に分布するMr5面末端から南方の扇状地面(U面)上へ低崖が延びるが、300m以上は連続しない。東側が地形的に高い。
E篠岡南部の小黒集落の載るMr5面は東へ逆傾斜しており、明らかに断層変位地形である。Mr5面上での高低差は約3mあり、3m以上西側が高くなったと考えられる。なお、この面の北に位置するMr4面上にも変形が認められていた可能性があるが、現在は確認できない。
L−1−3リニアメント
本リニアメントの特徴をまとめ、以下に示す。リニアメント判読結果は、図3−2−5に示す。
@九頭竜川左岸の段丘面上から丘陵と閉塞谷の谷底面の境界付近に連続するNS方向のリニアメントで、日活(1991)の松岡断層に一致する。
Aリニアメントは、主に傾斜変換点、低崖、丘陵と平野の直線的な境界、三角末端面等の地形要素により構成される。
B九頭竜川左岸に広く分布するMt2面上には、傾斜変換点の連続がNS〜NNW−SSE方向に300m程度の長さで認められ、本リニアメントの北部を構成する。リニアメントに沿って、明らかに一連と考えられる段丘面の変形が明瞭に認められることから、この変形は東側隆起の断層変位により形成されたものと考えられる。Mr2 面はこのリニアメントを境に西側が5m沈降し、その西側の末端は沖積面下に埋没する。リニアメントの南の延長上にある沖積面および扇状地面上には変形は認められない。
C吉野堺南方に分布する高位扇状地面上には、扇状地を直線的に分断する低崖の分布が認められ、東側隆起の断層変位による変形の可能性が示唆される。低崖は、吉野堺付近の低位扇状地面上には連続しないが、九頭竜川左岸のMt2面上に認められるリニアメントの延長にほぼ一致する。
D西野中東方の丘陵と谷底面との境界は直線的であり(NNW−SSE方向)、三角末端面の分布を伴う。また、西野中付近においては谷が埋積されており、断層活動により形成された地形である可能性がある。
2)L−2リニアメント
L−2リニアメントは、竹田川と九頭竜川に挟まれる丸岡町東方の丘陵に分布し、連続および分布方向からL−2−1リニアメント、L−2−2リニアメントおよびL−2−3リニアメントに分けられる。L−2−2リニアメントおよびL−2−3リニアメントは丸岡町舛田東方で南方への連続は途切れるが、ほぼ同方向の延長上に短いリニアメントの分布が認められ、それらを各々L−2−2'リニアメントおよびL−2−3'リニアメントとする(図3−2−4)。各リニアメントはNS方向およびNNW−SSE方向で湾曲する。
以下に、各リニアメント毎にその特徴を示す。
L−2−1リニアメント
@女形谷東方から曽々木東方の丘陵中に認められるNS〜NNW−SSE方向で湾曲するリニアメントで、後述のL−2−2リニアメントと合流する。日活(1991)の剣ヶ岳断層の一部に一致する。
Aリニアメントは、主に傾斜変換点、鞍部、三角末端面等の地形要素により構成され、やや不明瞭である。
B各地形要素は丘陵中に発達し、その連続は尾根を線状に分断することから断層変位地形の可能性がある。断層変位のセンスは、地形からは判断できない。
L−2−2リニアメントおよびL−2−2'リニアメント
@L−2−2リニアメントは、L−2−1リニアメントの西側にほぼ並行して認められるNNW−SSE方向のリニアメントで、途中L−2−1リニアメントが合流する。L−2−2'リニアメントは、その南方の延長に認められる。これらのリニアメントは、日活(1991)の剣ヶ岳断層の一部に一致する。
Aこれらのリニアメントは、主に傾斜変換点、鞍部、三角末端面、直線谷等の地形要素により構成され、やや不明瞭である。L−2−2リニアメントとL−2−2'リニアメントの間は古い土石流堆積面で分断され、リニアメントを構成する地形要素は認められない。
B曽々木東方のL−2−1リニアメントとの合流点付近より南方では、L−2−2リニアメントに沿った水系の屈曲が認められ、左横ずれの変位が示唆される。なお、リニアメントの北方においては同様の変位を示唆する地形要素は確認できない。
L−2−3リニアメントおよびL−2−3'リニアメント
@L−2−3リニアメントは、L−2−2リニアメントの西側に並行して認められるNS方向のリニアメントで、日活(1991)の剣ヶ岳断層の一部に一致する。L−2−3'リニアメントはその南方の延長に相当する。
Aこれらのリニアメントは、主に傾斜変換点、鞍部、直線谷等の地形要素により構成され、やや不明瞭である。L−2−3とL−2−3'リニアメントとの間には扇状地面が分布し、その連続は確認できない。
B各地形要素は丘陵中に発達し、その連続は尾根を線状に分断することから断層変位地形の可能性がある。断層変位のセンスは、地形からは判断できない。