4 [文中の用語の解説]

○確実度

活断層であるかどうかの確からしさ(新編「日本の活断層」の定義による)。

確実度T 活断層であることが確実なもの

確実度U 活断層であると推定されるもの

確実度V 活断層の可能性があるが、他の原因により活断層地形が形成された疑いが残るもの

○活動度 

活断層の活動の程度を示し、長期間の平均変位速度で区分する。

A級  平均変位速度  10〜1m/1,000年

B級  平均変位速度  1〜0.1m/1,000年

C級  平均変位速度  0.1〜0.01m/1,000年

○谷の左ずれ屈曲 

断層の向かい側が左手方向にずれている断層を左横ずれ断層という。

また、断層線を境に谷、尾根が屈曲していることがある。このような断層運動によって生じた地形が、横ずれ地形である。しかし、浸食作用によって断層線の部分で谷や尾根が偶然に屈曲することもあるので、それらが系統的に屈曲していることが、横ずれ活断層の証拠となる。

○第四紀

新生代第三紀に続く地質時代最後の時代。更新世と完新世とからなり、約180万年前から現在にいたる。1万年前以降を完新世(後氷期)、それ以前を更新世とし、更新世は180〜70万年前、70〜15万年前、15〜1万年前をそれぞれ前期、中期、後期に区分する(笠原、杉村 1978:地球科学10,岩波書店)。また、更新世に堆積した地層を、更新統と呼び、更新世前期、更新世中期および更新世後期に堆積した地層をそれぞれ下部更新統、中部更新統、上部更新統と呼ぶ。第四紀より古い地質年代を先第四紀という。

○中位段丘

海、湖、河川などの水中で形成された平坦面が、海面変化、気候変化、地殻変動などにより離水してできた階段状の地形を段丘、平坦面を段丘面と呼ぶ。日本の段丘は、形成年代の古いものから高位、中位、低位段丘に分けられる。このうち、海成中位段丘は約10万年前頃の高海水面時に、当時の海岸付近で形成された地形。

○リニアメント

空中写真等で識別される地形の線状構造をいう。地質構造を反映する組織地形および第四紀の地殻変動に起因する変動地形を含む。変動地形は第四紀後期の地殻変動の活発な地域においては顕著なリニアメントを形成しており、変動地形の抽出は活断層研究の研究に重要な役割を果たす。

○撓 曲

2つの地塊があって、相対的に異なる方向に動くときできる断層を伴わない局所的な曲がり。

○表層音波探査、マルチチャンネル音波探査

表層音波探査は水深100m以浅で海底下10数mの地層を対象に、波長の短い音波を用いておこなわれる。一方、マルチチャンネル音波探査は、海底下数100mまでの地層を対象にエネルギーの大きな音波を用いておこなわれる。多数の受信機を用いることから、マルチチャンネル音波探査と呼ばれる。

○火山灰

AT火山灰(姶良Tnテフラ(AT))

約2.4万年前、南九州姶良カルデラ(鹿児島湾北部、現在の桜島付近)から噴出した火山灰は日本列島とその周辺海域に広く分布し、最終氷期の広域指標層である。含まれる火山ガラスの形状、屈折率(n=1.498〜1.501)から同定できる。

K−Tz火山灰(鬼界葛原(キカイトヅラハラ)テフラ(K−Tz))

鬼界カルデラを噴出源とし、約7.5〜9.5万年前に噴出した巨大火砕流堆積物とその降下火山灰。特徴的な高温型石英(β石英)を含み、遠隔地での同定の手がかりの一つとされている。

DKP火山灰(大山倉吉テフラ(DKP))

山陰の大山火山から約5〜4.5万年前に噴出した降下軽石層を主体とするもの。火山ガラスよりも斑晶鉱物の特性から同定される。

AT火山灰(鬼界アカホヤテフラ(K−Ah))

南九州鬼界カルデラから約6300年前に噴出した降下軽石を含む降下火山灰。西日本の縄文時代文化に大打撃を与えたテフラで、広域指標層でもある。