3−1 柳ヶ瀬断層

栃ノ木峠以北から板取までの区間では、柳ヶ瀬断層は孫谷川の東側をやや明瞭なリニアメントとして表れ、東側隆起で、左横ずれが卓越する。同断層は約10万年前以前の地層を切り、破砕帯起源の地すべり岩塊に覆われる。同岩塊の形成以前に最新の活動があったが、その年代は特定できない。しかし、地すべり岩塊に覆われ、断層に近接する崖錐性堆積物には下位の中位段丘堆積物で見られるような断層変形は認められないこと、断層の活動性を示唆するリニアメントが栃ノ木峠以南と比して不明瞭となることから、崖錐堆積物の堆積以降の断層の活動の存在は疑わしい。

文献等を参考にすると、柳ヶ瀬断層は椿坂峠付近より北側では1325年(正中2年)の地震の際には活動していない。また、同箇所から北部の中河内北方では約3万年前頃の扇状地堆積物に断層変位が認められないとの報告がなされている。このように最新活動時期は南部と北部で異なり、断層が同時に動いた証拠は見つかっておらず、地域毎に別々の時期に断層は動いたと推定される。本調査で明らかとなった柳ヶ瀬断層北部での最新活動時期もこれと矛盾するものではなく、南部より数万年古い、南部とは別の時期に断層運動があったと判断される。