2−3 柳ヶ瀬断層北部の調査結果

観察された断層は、この付近で最大級の破砕帯を有するものであり、第四紀の地層を切ること、南部の栃ノ木峠から延びるほぼ南北方向のリニアメントと対応することから柳ヶ瀬断層と判断した。

栃ノ木峠以北から板取まで、柳ヶ瀬断層は、

a)主として孫谷川の東側斜面を通り、やや明瞭なリニアメントとして表れる。

b)断層は東側隆起の逆断層で、条線および付近の谷の屈曲から判断すると左横ずれが卓越する。

c)東側の破砕された貫入岩と西側の約10万年前以前に堆積した中位段丘堆積物が、おおよそN10゚E/50゚Eの断層面で接する。

d)最新の断層活動は、中位段丘堆積物の堆積以降で、断層を覆う破砕帯起源地すべり岩塊の地すべり時期以前である。

地すべり時期に関する情報は得られなかったが、約7.5〜9.5万年前頃に堆積した崖錐堆積物の水平な堆積構造は断層変位を受けていないと推定され、周辺地形や地質状況がら判断すると最新の活動時期は崖錐堆積物堆積以前の約10万年前より古いと判断される(図2−14)。