(3)断層露頭の最上部周辺の火山灰分析結果(図2−4、図2−5、図2−6)

(a)試料採取

拡幅した断層露頭最上部で、詳細な火山灰層序の検討のため、5cm間隔で試料を採取した。採取測線と採取位置は図2−9に示す。測線毎の試料数は、LP2(4試料)、L1(17試料)、LP1(16試料)、L2(6試料)、L3(6試料)である。また、福井大山本先生が分析された位置も記入している(図2−9)。

(b)結 果

分析結果を、図2−10図2−11−1図2−11−2に示す。

1)崖錐性堆積物(4層)の火山灰

本堆積物中から、1%前後の微量のβ石英が産出した。追試として福井大学山本先生の採取試料からもβ石英(電子顕微鏡観察およびX線分析)が確認された。β石英の供給源としては、鬼界葛原火山灰(K−Tz、約75,000〜95,000y.B.P.)と考えられる。

2)支流性低位段丘堆積物(3B層)中の火山灰

本堆積物中の火山灰はバブルウォール型で屈折率(1.4995〜1.5013)を示すAT火山灰(21,000〜24,000y.B.P.)純層で、肉眼でもその存在を認めることができる。上位の3A層からもAT火山灰が産出するが、二次的堆積と判断した。

3)中位段丘堆積物(6A層)中の火山灰

L3測線で中位段丘堆積物(6A層)からもバブルウォール型の火山ガラスを微量産出した。バイオターベーション(生物撹乱)よって、上位のAT層純層からもたらされたものと判断した。

4)土壌中の火山灰

同様にLP1−10の微量のβ石英は、バイオターベーションと判断した。また、土壌中に含まれるAT火山灰ガラスも2次的な堆積と判断した。