(3)段丘調査のまとめ

測定の結果得られたデータを、越前岬から河野にいたるまでの距離を横軸に取り、プロットしたものを図2−2−1−6に示す。

海成段丘のL2面の分布は、ベンチ・ノッチの低位のものへとつながるようである。両者の標高は概ね5mで、これらの分布からみると、中位段丘面高度(特にM2面でみられたような北部と南部での有為な高度差は認められない。

仮に、現在5mに位置している海成段丘のL2面およびベンチ・ノッチの低位のものが、6,000年前の高海水準期の汀線を示すとすると、その隆起量は、海水準変化の+2mを除くと、6,000年間で約3mである。その平均変位速度は、0.5m/1,000年となり、B級である。中位段丘の高度分布より求めた平均変位速度の1m/1,000年と比べて、明らかに小さい。

海成段丘のL2面およびベンチ・ノッチの低位のものを6,000年前の高海水準期の汀線を示すものとした場合、10mあるいは10m以上を示すベンチやノッチの形成時期に疑問が残る。L2、L1の各面およびベンチ、ノッチ等の形成年代を何らかの方法で得る必要がある。

最後に、山本が福井県丹生郡越廼村佐武の海岸の穿孔貝の生痕跡から得た貝化石から年代試料を付記する(未公表試料巻末に年代データ添付)。それによると、現海水面より220cm上位のものがB.P.750±60年、290cm上位のもはB.P.1020±60年、170cm上位のものはB.P.800±60年である。それらを暦年代に読み替えると、それぞれ西暦1500〜1645年、1310〜1415年、1465〜1565年に相当する。