(1)地質構成

本トレンチには,全面に沖積層が露出している。沖積層は,断層の北側と南側で様相を異にしている。北側には,淘汰の悪い粗粒の礫層が分布している。断層沿いは,上方に向かってチューリップ状に開く構造が観察される。南側は,シルト・砂層の細粒分がほぼ水平な堆積構造を有しているのが見られる。

また,沖積層はF1〜F3断層によって,耕作土直下まで変位・変形を受けており,

南北各地層の形成順序を把握することが困難であるため,断層(F2断層)を挟んで両側は異なった地層として区別した。すなわち,トレンチに分布する地層は,北側に分布するT,U層の2層と南側に分布するA〜H層の8層に区分して記載する。

本トレンチに露出する地層は, 上位より以下の通りである。

1) 耕作土・盛土層

@ A層(木根,腐植土混じりの礫混じりシルト層;旧耕作土?)

本層は,層厚50cm程度の木根,腐植土を混じえる礫混じりシルト層で,人工改変を被っている。基質は灰色シルトで,結晶片岩起源の細砂を含む。本層は,ほぼ水平な堆積構造を示しているが,東面で本層下部は,地震動による流動化跡と考えられるC層と接している。

2)沖積層(南側のユニット)

@ B層(礫混じり砂層)

B層は,青灰色の礫混じり砂層である。西面での本層の底面は25°程度の北傾斜で,上面はほぼ水平の傾斜不整合を呈する。

A C層(腐植質シルト層)

C層は,褐灰〜赤灰色を呈する腐植質シルト層である。本層は,断層運動によって形成された地溝を埋めるように堆積している。また,東面では,本層がS字状に捲り上がり,A層の下部と接している。この捲り上がりは,地震動による流動化跡である可能性が高い。

B D層(砂 礫 層)

D層は,青灰〜灰オリーブ色を呈する砂礫層で,地溝を形成した断層の南側に沿って分布する。礫は結晶片岩で,径1〜4cm前後の亜角〜亜円を呈する。本層は,A層に不整合に覆われる。

C E層(砂混じり礫層)

E層は,暗オリーブ〜緑灰色を呈する砂混じり礫層で,地溝を形成した断層の南側下盤に位置する。礫は結晶片岩で,径1〜6cm前後のものが卓越する。

D F層(礫混じり腐植質シルト層)

F層は,灰オリーブ色を呈する礫混じり腐植質シルト層である。材を混入し,E層の下位に分布する。

E G層(砂 礫 層)

G層は,緑灰色を呈する砂礫層である.径0.5〜2cmの結晶片岩礫を主体とし,F層の下位に分布する。

F H層(腐植混じり礫層:断層帯)

H層は,暗青灰色を呈する腐植混じり礫層である。トレンチの中央部に現れた断層帯に介在しているもので,腐植質シルト・細礫等を混在する。堆積構造は,ほとんどが断層面に沿っており,断層運動により再配列したものと考えられる。

3)沖積層(北側のユニット)

@ T層(砂混じり礫層)

T層は,青褐色を呈する砂混じり礫層である。礫は結晶片岩で,径0.5〜2cm前後の小礫が卓越する。本層は,地溝を形成した断層の北側に沿って分布し,地表まで達した断層に挟まれている。

A U層(礫 層)

U層は,上述した断層帯の北側に分布する。淘汰の悪い径3〜20cm前後の礫が卓越していて,調査地西側に流路を有する大谷川の土石流堆積物である可能性が高い。