通常,愛媛県の中央構造線活断層系における殆どの活断層は,右横ずれ運動を繰り返してきており,主に北側の地塊が相対的に東方へ移動すると考えられ,本トレンチを構成する各層は,堆積場の変遷を示していると考えられる。
堆積場を判別する為の一資料として,本トレンチに分布する礫質土層5層(B・C・E・F・H層)を対象に礫種・礫径・形状・風化程度・面構造を調査した。図3−8−7、図3−8−8、図3−8−9は各礫質土層の面構造の走向・傾斜をステレオネット(下半球投影)(コンターダイヤグラム)に整理したものである。以下に,各層の面構造の傾向を示す。
B層:B層は,N16゜W20゜S及びN58゜E6゜Nの走向・傾斜に11%の集中が見られるが,各方向にもバラツキ,全体に特記すべき傾向は見られない。
C層:C層は,N89゜W24゜Sの走向・傾斜に16%の集中が見られた。全体的には,東−西〜北西−南東走向で,南傾斜の傾向を示す。
E層:E層は,N18゜E25゜Sの走向・傾斜に12%の集中が見られた。全体的には,北北東−南南西〜北東−南西走向で南傾斜の傾向を示す。
F層:F層は,N67゜E15゜Sの走向・傾斜に19%の集中が見られた。全体的には,東南東−西北西〜東西走向で,南傾斜の傾向を示す。
H層:H層は,N47゜W24゜S及びN46゜E26゜Sの走向・傾斜に7〜9%の集中が見られた。全体的には北東〜南西走向で,南傾斜の傾向を示す。
以上のことから,各層の面構造は,B層は全方向にバラツキがみられるのに対し,C層は東−西〜北西−南東方向の面構造が,E,F,H層は北東−南西方向の面構造が主体である。したがって,B層,C層,E・F・H層では堆積場が異なる可能性を示しているものと考えられる。