1) 耕作土・盛土を含む土層
@A層(腐植混じりシルト)
耕作土は,オリーブ黒色(5Y3/2)を呈し,非常に軟質である。本層はトレンチ掘削の際に殆ど剥ぎ取られたものの,若干取り除けなかった部分について薄く残っており,通常の層厚は15〜30cm程度である。
AB層(砂礫層;盛土を含む)
B層は,灰黄褐色(10YR4/2)を呈した緩い砂礫層である。本層は,耕作土直下に分布しており,南東側で薄く,北西側で厚く堆積しており,最大の層厚は約2mである。礫は,結晶片岩礫(緑色・黒色・石英質)の偏平状礫が大部分を占め,比較的新鮮で硬質なものが多いが,中には褐色を呈した半クサリ状礫を若干混入する。半クサリ状礫の表面はやや軟質であるものの,礫芯は比較的新鮮で硬質である。礫径は径3〜25cmの中礫〜大礫サイズが多く,径30cmを越える巨礫サイズも認められた。基質を構成する砂は,粗粒砂〜細粒砂主体でシルト分も混入しており全体的に淘汰は悪い。
また,本層上部と下部では礫のインブリケーションについてやや様相を異にする。上部では配列の規則性は殆ど無く,下部ではやや水平方向の傾向を示す為,前者は人工的な盛土であり,後者はトレンチ南の谷より供給された土石流的な堆積物であると推定される。
2) 沖積層
@ C層(砂礫層)
C層は,層厚0.1m〜1.5mの灰色(5Y6/1)を呈す砂礫主体層である。礫は中硬質の偏平状の結晶片岩礫(黒色・緑色・石英質)からなり,礫径は径0.5cm〜1cm程度の中礫サイズが多い。基質は極粗粒砂〜細粒砂からなり,やや締まる状態である。側方への連続性が悪く,主に東面に分布している。
本層は,層相からB層と同じくトレンチ南の谷から供給された土石流堆積物と推定される。
3) 段丘堆積物
@ D層(砂混り粘土〜腐植質粘土層(砂礫層を介在))
D層は,層厚30cm程度の灰色(5Y4/1)を呈す砂混り粘土層と黒色(N3)を呈す腐植質シルト層からなり,砂礫層を介在する。前者に混入する粗粒分は,中粒砂〜細粒砂を主体とし,希に小礫〜中礫サイズの結晶片岩の偏平状礫を混入する。後者は植物遺体を殆ど含まず,結晶片岩に含まれる黒雲母の細粒な砕屑物を少量混入する。本層は南北性の連続性が悪く,南側の一部に露出する程度である。
本層の腐植質粘土からは,W(1.15/0.75)で10,790±190y.B.P.(Beta137506)が,W(1.45/1.25)で11,630±80y.B.P.(Beta137507)の14C年代値が得られている。
A E層(砂礫層)
E層は,層厚20cm〜60cmのオリーブ灰色(5GY5/2)を呈す砂礫層である。礫は中硬〜やや軟質の偏平状の結晶片岩礫(黒色・緑色・石英質)を主体とし,礫径は径1〜5cmの中礫サイズのものが多い。基質は,粗砂〜シルトから成る。本層はほぼ水平からやや北方に緩く傾斜しており,層厚は特に北西方向に薄くなる傾向を示す。
BF層(砂混り礫層)
F層は,層厚80cm程度の灰オリーブ色(5Y5/2)を呈す砂混り礫からなり,西側法面の極狭い範囲にしか認められない。礫は,半クサリ状の偏平状である結晶片岩礫(黒色・緑色)を主体とする。礫径は,径2cm〜4cmの中礫サイズを主体とし,希に20cm大の大礫も混入する。基質は,極粗粒砂〜粗粒砂から成る。本層はG層を削剥して堆積したチャネル堆積物と考えられ,本層上部ではG層とインターフィンガー構造で接しており,ほぼ同時異相と判断される。
C G層(砂・礫混り砂の互層)
G層は,層厚30cm〜1.2m程度のオリーブ灰色(5GY5/2)を呈す砂及び礫混じり砂の互層で,ほぼ水平方向に成層(ラミナは水平に発達)するが,東側法面と西側法面ではやや層相を異にする。東側では淘汰の良い中粒〜細粒砂を主体とし,連続性の悪い礫混じり砂層から成る薄層を数層介在する。西側では,淘汰の悪い粗粒〜細粒砂主体で,希に径2mm程度の礫を混入する。層厚は特に北東方向に特に薄くなる傾向を示す。
本層の砂及び腐植質シルトから,S(3.45/1.75)で12,970±110y.B.P.(Beta137510)の,W(7.4/3.4)で14,720±80y.B.P.(Beta137508)の14C年代値が得られている。
また,本層から採取した火山灰分析試料からは,火山灰アトラス(町田・新井,1992)には記載されていない火山ガラスが検出されたが,始良−Tn(AT)火山灰およびK−Ah火山灰は検出されなかった。
D H層(砂礫層)
H層は,層厚1.5m以上の,灰オリーブ色(5Y5/2)を呈する砂礫層で,本トレンチでは最下部を構成する地層である。礫は,結晶片岩質(黒色・緑色主体)の偏平状をした,半クサリ状のものが多い。礫の淘汰は悪く,径5cm未満のものや,径30cm〜40cm程度の中礫〜巨礫のサイズまで見られる。基質は砂質シルトである。