1) イベントT(最新活動時期)
東側法面において本トレンチに露出する沖積層のうち,最も新しい堆積層と考えられるC層(砂質シルト)と下位に分布するD層(砂)は,地表下約0.6m以深で変形を受けている。また,その上方延長ではA層(耕作土)直下までC層中の細〜中礫が直立しており,これらの変位・変形にはF1断層が関与したと考えられる。またD層は,断層に沿ってC層とT層の境界部に介在され,A層直下まで薄く引き延ばされたように分布している。従
って,最新活動時期はC層堆積後と推定される。
2) イベントU
E−6〜E−7,W−5〜W−6間のE層及びF層は北側に撓んでおり,E,F層とT〜V層との間に東西方向の凹地を形成している。E,F層の撓みは,断層運動によって引きずり込みを受けた可能性が考えられる。C層及びD層は,この地溝を覆うように堆積している。また,E層中の偏平礫は,直立し,F2断層及びF3断層の断層運動によって再配列している。これらの断層はE層上面まで達している。従って,1つ前の活動時期は,E層堆積後,
D層堆積前と推定される。
また,E−6付近のE層中の巨礫も直立しており,F4断層により再配列を受けた可能性が考えられる。F4断層は地表下0.5mまで追跡できるものの,E層上面までは到達していない。F4断層は西側法面には認められないことも考慮すると,F4断層はイベントUに関連した派生断層と考えられ,E層堆積中には独立したイベントを認定しなかった。
3)イベントV
W2,W4およびE2,E4付近のF層中の大礫及び巨礫はほぼ直立し,F5断層及びF6断層(明瞭ではない)の断層運動により再配列している。また,F層はF5断層の断層運動により北側低下の変位・変形を受けており,この段差を埋めるようにE層は堆積している。従って,2つ前の活動時期は,F層堆積後,E層堆積前と考えられる。
本トレンチによって,畑野断層が確実度の低いイベントを除いても,少なくとも3回以上の断層活動を生じていることが明らかになった。活動履歴は以下のようである。
@ イベントT(最新活動時期):C層堆積後
A イベントU(1つ前の活動時期):E層堆積後,D層堆積前
B イベントV(2つ前の活動時期):F層堆積後,E層堆積前