(3)偏平礫の配列方向

断層の運動形態を検討する為,断層周辺の偏平礫の配列方向を調査した。調査方法は,上野田トレンチ西側法面のT層を対象として,偏平礫の長軸及び面構造を測定し,その走向・傾斜をシュミットネット〈下半球投影〉(コンターダイヤグラム)に整理した。測定個所は,W−7〜8区間の断層に近い地点とW−9〜10の断層から離れた地点とし,それぞれの領域に分けて検討した(図3−5−8図3−5−9)。なお,偏平礫の長軸をまとめたシュミットネットの走向・傾斜は,通常と異なる。軸の走向方向と傾斜の向きは,中心からプロットされている点(又は領域)の方向で表される。傾斜角は中心から点までの距離で表され,中心から円周に向かって傾斜角は小さくなる(円周上は0゜,中心は90゜)。

@ 偏平礫の面構造の走向・傾斜(図3−5−8

断層から離れた領域における偏平礫の面構造は,東西〜北西−南東走向,10゜〜20゜程度の南傾斜に若干の集中傾向を示すが,全体的にバラツキが見られる。

断層付近においては,東−西〜東北東−西南西走向,40゜〜80程度の南傾斜に集中する。

A 偏平礫の長軸の走向・傾斜(図3−5−9

断層から離れた領域における偏平礫の長軸の走向・傾斜は,N50゜〜70゜E,2〜16゜Sに集中が見られる他に,N8゜〜18゜E,5゜N,N54゜〜66゜E,2゜N(E),N45゜W,5゜S(E),N82゜W,7゜N(W)にも若干の集中が見られ,全体にバラツキが見られる。

断層付近では,N64゜〜78゜E,7゜〜10゜S,N60゜〜84゜E,1゜〜12゜N(E)に集中し,走向方向ではほぼ東北東−西北西方向に集中する。

B 調査結果

以上の結果を総括すると次のようにまとめられる。

○断層から離れた領域

面構造については,東−西〜北西−南東走向,低角な南傾斜の傾向が見られ,長軸の走向・傾斜については,走向方向はバラツキが見られるものの,傾斜は概して低角度である傾向が見られた。以上のことはT層堆積時の堆積構造を示しており,堆積物を供給した河川は,概して南から北方向に流下したことを示唆するものと考えられる。

   

○断層付近の領域

面構造については,東−西〜東北東−西南西走向,40゜〜80゜の中〜高角度の南傾斜を示し,長軸の走向・傾斜は,東北東−西南西走向,低角度の南北両傾斜の傾向が認められた。調査地における断層活動の影響が少ない偏平礫の面構造と比較すると,@で述べた東−西走向方向,10゜〜20゜の南傾斜を代表的な傾向とすれば,走向はやや西北西方向に回転し,傾斜は30゜〜70゜程度立ってきたことを示している。これらの礫の面構造,長軸走向方向は,ほぼリニアメントの走向方向に一致しており,また面構造の傾斜は断層面の傾斜に調和的であることから,断層の横ずれによる再配列が考えられる。