岡村断層の最新活動時期として,
@岸ノ下西トレンチ:1,090〜960y.B.P.(AD885〜1,235)
A岸ノ下東トレンチ:1,820〜760y.B.P.(AD110〜1,300)
が得られた。したがって,最新活動時期は1,090〜960y.B.P.(AD885〜1,235),すなわち
1,000年前前後に限定できる。
これまでのトレンチ調査結果では,岡村断層の最新活動については,次の年代が報告されている。
@飯岡(京都大学,1984):5〜7世紀(岡田,1989)
A飯岡(広島大学,1988):4世紀以後(Tsutsumi et al.,1991)
B飯岡(地質調査所,1988):4〜7世紀(山崎ほか,1992)
C岸ノ下(広島大学,1997):AD1,682±104以降(中田ほか,1998),ジオスライサ−調査
5〜7世紀,4〜7世紀の年代は,断層変位を受けている堆積物に含まれている土師器(4世紀),および断層変位を受けている地層や覆われている地層中に含まれる須恵器に基づき歴史時代の地震記録がないことから,有史以前と判断したものである。須恵器は12世紀までに作成されていたことから,Tsutsumi & Okada (1996) は,岡村断層の最新活動時期を4〜12世紀と広めに修正している。今回得られた1,090〜960y.B.P.は,この範囲内である。したがって,これまでのトレンチ調査結果とは矛盾せず,さらに活動時期を絞り込めた。
なお,中田・奥村・後藤・高田・堤・原口・松木(1998)は,ジオスライサーによって,16世紀以降の最近活動を推定しているが,同地点で実施した岸ノ下西トレンチ調査とは矛盾する。岸ノ下東トレンチの結果も考慮すると岸ノ下西トレンチ調査の結果を採用するのが妥当と思われる。