(1)ボーリング調査

(1) 概 要

新居浜市岸ノ下西(A)地点では,中田ほか(1998)のジオスライサー調査により断層の存在が確かめられている。ボーリング調査では,トレンチ調査では把握できない深部の地層の確認と変位の解明を行う目的で,断層を挟んで3本のボ−リングを実施した(図3−4−2)。このうちKiA−1,KiA−2の2本のボーリングは断層の北側で,KiA−3は断層の南側で実施した。

(2) 調査結果

岸ノ下西(A)地点のボーリング調査による地質断面図を図3−4−3に示す。なお,本図はトレンチ調査の結果をも考慮して作成している。

各ボーリングの地質構成は次の通りである。

KiA−1 孔口標高:41.66m,掘進長:10.00m

KiA−1の地質構成は上位から以下の通りで,すべて沖積層と考えられる。

・0〜0.25m

 褐色粘性土からなる表土

・0.25〜1.00m

 黄褐色礫混じり砂層で,KiA−2ボーリングの0.20〜0.55mの黄褐色礫混じり砂層に,またトレンチではA層に相当する。礫は中硬〜軟質で径2cm程度の板状であり,砂はシルト分を含む中粒砂から細粒砂である。

・1.00〜1.80m

 暗赤褐色腐植質シルト層で,KiA−2ボーリングの0.55〜1.40mの褐色砂質シルト層に,またトレンチではB層あるいはD層に相当する。木片,炭を介在しており,深度とと  もに砂分が多くなる。

・1.80〜3.70m

 暗緑褐色礫混じり砂層で,KiA−2ボーリングの1.40〜3.65mの暗緑灰色礫混じり砂層に,またトレンチではG〜J層に相当する。礫は硬質な結晶片岩(径0.5〜3cm)であり,砂はシルト分を含む中粒砂〜細粒砂である。

・3.70〜4.30m

 暗緑灰色砂層で,KiA−2ボーリングの3.65〜4.40mの暗緑灰色砂層に相当する。砂は白雲母を多く含むシルト質な細砂である。

・4.30〜4.75m

 暗緑灰色礫混じり砂層で,シルトおよび礫を混じえる中粒砂〜粗粒砂である。また本層は,KiA−2ボーリングの4.40〜4.80mの暗緑灰色礫混じり砂層に相当する。

・4.75〜6.00m

 暗褐色腐植質シルト層で,多量の腐植物および木片を混じえる。またKiA−2ボーリングの4.80〜5.50mの黒褐色腐植質シルト層に相当する。

・6.00〜6.40m

 暗褐色砂層で,シルトおよび礫を混じえる中粒砂である。また本層は,KiA−2ボーリングの5.50〜6.00mの緑灰色礫混じり砂層に相当する。

・6.40〜7.00m

 暗褐色腐植質シルト層で,KiA−2ボーリングの6.00〜6.60mの黒褐色腐植質シルト層に相当する。

・7.00〜8.70m

 暗緑灰色礫混じり砂層で,KiA−2ボーリングの6.60〜7.90mの暗緑灰色礫混じり砂層に相当する。礫は硬質な結晶片岩礫(径1〜3cm)で構成され,砂はシルト分を含む中粒砂〜細粒砂である。

・8.70〜10.00m

 暗褐色礫混じりシルト層で,腐植物,木片および礫を介在する。また本層は,KiA−2ボーリングの7.90〜9.00mの暗緑灰色礫混じり砂層に相当する。

KiA−2 孔口標高:41.66m,掘進長:10.00m

KiA−2の地質構成は上位から以下の通りであり,深度9mまで沖積層,それ以深は岡村層と考えられる。

・0〜0.20m

 褐色粘性土からなる表土

・0.20〜0.55m

 黄褐色礫混じり砂層で,KiA−1ボーリングの0.25〜1.00mの黄褐色礫混じり砂層に,またトレンチではA層に相当する。礫は中硬〜軟質で径1cm程度の偏平板状である。

・0.55〜1.40m

 褐色砂質シルト層で,KiA−1ボーリングの1.00〜1.80mの暗赤褐色腐植質シルト層に,またトレンチではB層あるいはD層に相当する。腐植物,木片,小礫および薄い砂層を介在している

・1.40〜3.65m

 暗緑灰色礫混じり砂層で,KiA−1ボーリングの1.80〜3.70mの暗緑褐色礫混じり砂層に,またトレンチではG〜J層に相当する。礫は硬質な結晶片岩(径0.5〜3cm)であり,砂はシルト分含む中粒砂〜細粒砂である。

・3.65〜4.40m

 暗緑灰色砂層で,KiA−1ボーリングの3.70〜4.30mの暗緑灰色砂層に相当する。砂は白雲母を多く含むシルト質な細砂である。

・4.40〜4.80m

 暗緑灰色礫混じり砂層で,シルトおよび礫を混じえる中粒砂〜粗粒砂である。また本層は,KiA−1ボーリングの4.30〜4.75mの暗緑灰色礫混じり砂層に相当する。

・4.80〜5.50m

 黒褐色腐植質シルト層で,多量の腐植物および木片を混じえる。またKiA−1ボーリングの4.75〜6.00mの暗褐色腐植質シルト層に相当する。

・5.50〜6.00m

 緑灰褐色礫混じり砂層で,KiA−1ボーリングの6.00〜6.40mの暗褐色砂層に相当する。礫はφ1〜2cm板状で,シルト分を介在する。

・6.00〜6.60m

 黒褐色腐植質シルト層で,腐植物,木片および結晶片岩礫を介在する。また本層は,KiA−1ボーリングの6.40〜7.00mの暗褐色腐植質シルト層に相当する。

・6.60〜7.90m

 緑灰色礫混じり砂層で,シルト質砂層を挟む。また,本層はKiA−1ボーリングの7.00〜8.70mの暗緑灰色礫混じり砂層に相当する。礫は硬質な結晶片岩礫(径1〜3cm)で構成され,砂は腐植物およびシルト分を含む中粒砂〜細砂である。

・7.90〜9.00m

 暗赤褐色礫混じりシルト層で,本層は,KiA−1ボーリングの8.70〜10.0mの暗褐色礫混じりシルト層に相当する。礫は結晶片岩からなり,径1〜2cmの亜円礫である。またシルトは赤色を帯びる砂質シルトである。

・9.00〜10.00m

 オリーブ灰色礫混じり砂層。礫は結晶片岩からなり,径1〜3cmの偏平板状である。一方砂は,シルト分含む中粒砂〜細砂である。また本層は岡村層であり,トレンチのU層に相当する

KiA−3 孔口標高:41.66m,掘進長:10.00m

KiA−3の地質構成は上位から以下の通りであり,すべて岡村層と考えられる。

・0〜0.30m

 暗褐色粘性土からなる表土

・0.30〜0.55m

 灰褐色礫混じり砂層。礫は結晶片岩類からなり,径1cm前後の偏平板状である。また本層はトレンチのU層に相当する。

・0.55〜1.55m

 赤黄褐色礫混じり砂層。礫は中硬〜軟質な結晶片岩からなり,径1〜3cmの偏平板状である。一方砂は結晶片岩の淘汰の良い風化生成物である。また本層はトレンチのU層に相当する。

・1.55〜2.00m

 灰色シルト質砂層。結晶片岩源の細砂でシルト分を介在する。本層はトレンチのT層に相当する。

・2.00〜4.00m

 暗緑灰色礫混じり砂層。礫は中硬〜軟質な結晶片岩からなり,径1〜3cmの偏平板状である。一方,砂は中粒砂〜細砂でシルト分を介在する。また本層は,トレンチのU層に相当する。

・4.00〜4.60m

 暗赤褐色礫混じり粘土層。粘土は軟質で,礫および砂分を介在している。本層はトレンチのV層に相当すると推定される。

・4.60〜8.30m

 暗緑灰色礫混じり砂層。礫は硬質な結晶片岩からなり,径1〜3cmで偏平板状を呈する。砂は結晶片岩源で中粒砂〜細砂である。本層はトレンチのU層に相当すると推定される。

・8.30〜8.85m

 暗緑灰色砂層。白雲母を混じえる中〜細砂で光沢を呈する。

・8.85〜10.00m

 暗緑灰色礫混じり砂層。礫は結晶片岩からなり,径1cm程度で板状である。砂は中粒砂〜粗粒である。

 層相および固結度の程度から深度0.3m以深には岡村層が分布すると考えられ,トレンチ調査でも確認された。

KiA−1,KiA−2ボーリング調査によれば,深度1〜2m,深度5〜6mの腐植質シルト層や深度9m付近のシルト層は鍵層として連続するが,KiA−3との間で急に分布が断たれ,KiA−3では表層から岡村層が確認される事から,断層はKiA−2とKiA−3の間を通ることが推定される。