本トレンチ調査では, 東面に3条(F1断層,F2断層,F3断層)および西面に2条(F1断層,F2断層)の断層が確認できた。断層は一般に南側隆起の変位を示すが,変位量は大きくないことから横ずれ変位量が優勢と推定される。
@F1断層
F1断層は東西両面(東面:測標E12−E13付近,西面:測標W11付近)で確認できる。
F1断層の走向傾斜はN68°W76°Sであり,ほぼリニアメントの走向と一致する。また本断層はB層まで切断しており,A層に覆われる。
AF2断層
F2断層も両面(東面:測標E8−E10付近,西面:測標W9−W11付近)で確認できる。F2断層は西面ではN72°W84°Sの走向傾斜で,B層までを変位させている。F2断層は最下位のJ層ではほぼ鉛直な断層面を持つが,2〜3条に枝分かれしている。このうち北側の分枝断層は高角度でI層まで変位させるが,H層中では不明になる。また南側の分枝断層は約45°北傾斜で,G層から更に2条に分枝し,F層まで変位させているがE層中で不明になる。
BF3断層
F3断層は東面のみで確認できEW84°Nの走向傾斜を示す。F3断層はG層下部までを変位させているが,F層は変位を受けていないように見える。
(2) 変形構造
断層による変位構造は特にF層より下位の層において明瞭に観察できる。西面ではG層より下位の地層が,F1断層およびF2断層によって大きく変形している。特にI層はF1断層に強く引きずられたと考えられ,F1断層に沿って注入されたような産状を示す。 一方,東面でも,F1断層付近でI,J,K層が大きく変形しており,断層に沿って礫が直立しているのが観察できる。
本トレンチにおいて,I,JおよびK層の変位と比較して,F層より上位地層の変位量が非常に小さく,F1断層付近でやや屈曲する程度である。これらのことから,F層より
下位の地層は数回の断層変位を累積していると考えられる。