(1)ボーリング調査結果

(1) 概 要

高井西地点のボーリング調査は,リニアメントの西端とその西30mの延長部の2箇所で断層位置の絞り込みとトレンチ規模を決定する目的で実施した。調査位置を図3−1−8に,地質断面図を図3−1−9図3−1−10に示す。地質断面図は,トレンチ調査の結果をも考慮して作成した。

ボ−リング調査により,断層は低崖の南側を通ると推定された。

(2) 調査結果

ボ−リング調査は,まず,試掘を行った水田内で,孔間隔30mで北からTA−1,TA−2,TA−3の3本実施した。各地点のボーリングコア内の地質状況は下記のとおりである。

TA−1 孔口標高:EL=42.17m,掘進長:10.00m

 0.00m〜0.20m

  粘性土からなる耕作土

 0.20m〜1.20m

  黄褐色を呈するシルト層。褐色の褐鉄鉱バンドが認められる。

 1.20m〜1.80m

  暗灰色を呈する腐植質シルト層。

 1.80m〜2.50m

  径1cm前後の硬質な砂岩礫と頁岩礫(亜円礫)を介在する砂質シルト層。シルトはやや腐植質。

 2.50m〜10.00m

  径5mm〜5cmの新鮮な砂岩礫と頁岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙を中砂〜粗砂が充填する。

TA−2 孔口標高:EL=41.63m,掘進長:10.00m

 0.00m〜0.20m

  粘性土からなる耕作土。

 0.20m〜0.60m

  黄褐色を呈するシルト層。

 0.60m〜1.00m

  暗灰色を呈する腐植質シルト層。

 1.00m〜7.40m

  径1〜5cmの新鮮な砂岩礫と頁岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙を中砂〜粗砂が充填する。部分的に径10〜15cmの玉石を介在する。

 7.40m〜10.00m

  径1〜3cmの新鮮な砂岩礫と頁岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙をシルトが充填する。上部の砂礫層と比較して,礫径が小さく,基質がシルト質となる。

TA−3 孔口標高:EL=41.61m,掘進長:10.00m

 0.00m〜0.20m

  粘性土からなる耕作土。

 0.20m〜0.90m

  褐色の褐鉄鉱バンドが認められるシルト層。

 0.90m〜2.00m

  腐植物,植物片を混じえる腐植質シルト層。

 2.00m〜10.00m

  径0.5〜5cmの新鮮な砂岩礫と頁岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙を中砂〜粗砂が充填する。

これらのボーリング調査結果から作成した地質断面図を図3−1−9に示す。図3−1−9によれば,表層の耕作土を取り除けば,概ね,重信川の後背湿地堆積物であるシルト層もしくは腐植質シルト層(厚さ0.8m〜1.8m)と旧河床堆積物である砂礫層(厚さ8m〜9m)に区分できる。腐植質シルト層の基底面は,TA−1:EL=39.6m,TA−2:EL=40.6m,TA−3:EL=39.6mである。高井A地点の試掘は,TA−2とTA−3の間で実施し,南に緩やかに傾斜する撓曲構造が推定されている。したがって,TA−2とTA−3の間の1m程度の高度差が断層運動による撓曲構造による可能性があるが,当箇所のボーリング調査だけからは断定できない。

この撓曲構造を確認し,トレンチ調査地点を絞り込むため,さらに東隣の水田内(リニアメントの西端部にあたる)で孔間隔20mで,2本のボーリング(北からTA’−1,TA’−2)を実施した。両地点のボーリングコア内の地質状況は下記のとおりである。

TA’−1 孔口標高:EL=41.60m,掘進長:10.00m

 0.00m〜0.20m

  粘性土からなる耕作土。

 0.20m〜1.10m

  暗褐色を呈する腐植質シルト層。

 1.10m〜6.10m

  径1〜5cmの新鮮な砂岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙を中砂〜粗砂が充填する。

 6.10m〜10.00m

  径5mm〜3cmの新鮮な砂岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙をシルト質な砂が充填する。

TA’−2 孔口標高:EL=41.60m,掘進長:10.00m

 0.00m〜0.30m

  粘性土からなる耕作土。

 0.30m〜0.90m

  黄褐色を呈するシルト層。

 0.90m〜2.20m

  暗灰色を呈する腐植質シルト層。

 2.20m〜10.00m

  径5mm〜3cmの新鮮な砂岩礫(亜円礫)を主体とする砂礫層。礫と礫の間隙を中砂〜粗砂が充填する。

これらのボーリング調査から作成した地質断面図を図3−1−10に示す。図3−1−10によれば,試掘をはさんで実施したボーリング調査結果(図3−1−9)と同様に,表層の耕作土を取り除けば,概ね,重信川の後背湿地堆積物であるシルト層もしくは腐植質シルト層(厚さ0.9m〜1.9m)と旧河床堆積物である砂礫層(厚さ8m〜9m)に区分できる。腐植質シルト層の基底面は,TA’−1:EL=40.5m,TA’−2:EL=39.4mである。TA’−1とTA’−2の間の1m程度の南側低下の高度差は,高井A試掘地点で認められた南に緩やかに傾斜する撓曲構造と試掘をはさんで実施したボーリング調査による南側低下の高度差と対応する。このことから,TA’−1とTA’−2のボーリング地点間(低崖の南側)を断層が通過すると推定され,高井西地点がトレンチ調査として選定された。