(3)リニアメント

以下に,空中写真で判読したリニアメントの地表踏査(概査)結果を,断層毎に述べる。

(1) 中央構造線桜樹屈曲部

@ Kw−1リニアメント

本リニアメントは,丹原町相之谷から丹原町臼坂を経て丹原町湯谷口にかけて分布するが,中央構造線桜樹屈曲部に相当する丹原町相之谷から丹原町臼坂までの区間は,山地のため,変位地形を判定する基準地形面が乏しく,鞍部地形を中心としている。リニアメント上の谷では,和泉層群が破砕を受けた断層露頭が数箇所認められる。本リニアメントはS字を書くように分布するため,断層面の走向にばらつきがみられるが,断層面の傾斜は南へ20〜80゜である。破砕部には貫入岩であるデイサイトを伴うが,デイサイトには貫入後の断層変位,断層破砕は認められない。

(2) 川上断層(東部),小松断層

@ Kw−1リニアメント

本リニアメントは,丹原町相之谷から丹原町臼坂を経て丹原町湯谷口にかけて分布するが,川上断層(東部)に相当する丹原町臼坂から丹原町湯谷口までの区間は,直線谷,低崖および山地斜面と平地の境あるいは斜面変換線にほぼ一致している。 

丹原町川西(Kw−1)では,本リニアメントはデイサイトあるいは流紋岩質岩からなる小高い丘と平地間に比高2〜3mの低崖として観察される。Kw−1では北側に泥岩勝ち互層(和泉層群),南側に流紋岩〜デイサイト質岩脈が分布している。境界面は不明瞭であるが,泥岩勝ち互層は粘土化が著しい。なお,これらを覆う礫層と断層の関係は植生により不明である。

本リニアメント最東端の中山川河床(Kw−2)において狭義の中央構造線の断層露頭を確認できる(図2−3−4−4)。本露頭では,北側の和泉層群と南側の泥質片岩の間に幅数mの変質両輝石安山岩が貫入しており,両側の断層面はN75°E・30°Nである。断層ガウジおよび岩脈からK−Ar年代が測定されており,それぞれの年代は59.3±1.9Ma(柴田ほか,1993),21.0±1.2Ma(田埼ほか,1990)である。またKw−2露頭に近接する中山川左岸側河岸(Kw−3)に沖積層と和泉層群および古期礫層(岡村層相当層)と和泉層群に境界断層が存在することが報告されている(岡田,1977)。当露頭では,沖積礫層も断層変位を受け,断層に沿って,偏平礫も直立している。

A Kw−2リニアメント

丹原町湯谷口〜志川まで延びる本リニアメントに沿っては断層露頭は確認できなかった。本リニアメントは山地と平野の間の地形境界である。東端部では,開析されており,沖積錐状には連続しない。また,山地とLU段丘面との境界は明瞭で,直線的である。

B Kw−3リニアメント

本リニアメントは湯谷口で0.5kmの長さで分布する。本リニアメントに沿って断層露頭は確認できなかった。Kw−3リニアメントはKw−2リニアメントの南側に分布し南傾斜である。両リニアメントによって孤立丘が形成されている(図2−3−1−4)。

C Kw−4リニアメント

丹原町安井から小松町新屋敷にいたるSWからNEに延びるリニアメントに沿っては,断層露頭は確認されなかった(図2−3−1−5図2−3−1−6)。LU段丘面には,1〜1.5m程度の比高を呈する低崖が確認でき,また中山川右岸に広がるA段丘面(小松町大頭)にも1.5m程度の比高を呈する低崖および右横ずれを示すような畦のずれが確認された。

リニアメント西方延長のこんぴら橋下(Km−4)では北側の礫層(岡村層)と南側の泥岩勝ち互層(和泉層群)とがシャープな面で接しており(地質調査所,1993),泥岩勝ち互層(和泉層群)は幅数mの範囲で破砕され,部分的に粘土化している(図2−3−4−5

D Km−1リニアメント

小松町の妙之谷川〜西条市宮の下に延びる本リニアメントに沿っては,断層露頭は確認出来なかった(図2−3−1−7)。小松町原〜都谷では,山地とA段丘面および沖積層に比高0.7〜1.2m程度の低崖が観察できるが,沖積扇状地面にはリニアメントは連続しない。

小松中学校裏(Km−1)では北側の大谷池礫層と南側の岡村層が接触しており境界面はN74°E・50°〜60°Nの走向・傾斜を示している(高橋和,1976)(図2−3−4−7)が,現在は擁壁が施工されており観察できない。

Km−1リニアメントの東端である西条市新屋敷〜宮の下では,A段丘面上および沖積面上に撓曲および低崖(0.3〜0.7m)が確認できる。また,西条市土居ではトレンチ調査が行われており,小松断層の最新活動時期は1,900〜1,200y.B.P.,1つ前の活動時期は4,040〜1,950y.B.P.の結果が得られている(堤ほか,1998)。

E Km−2

小松町の大谷池〜岡村に至る本リニアメントに沿っては,断層露頭は確認できなかった(図2−3−2−1。本リニアメントは,Dランクと確実度が低く,山地鞍部にのみ認められることから,浸食地形である可能性が高い。本リニアメント沿いには,岡村層が分布する。岡村層は細礫層と砂層の互層で構成され,層厚は約50m以上である。石鎚山サービスエリア南方のハイウェイオアシス工事中の切土法面で認められた岡村層は北東方向に約15°程度で緩く傾斜している。

F Km−3

西条市宮の下から南東方向に延びる本リニアメントに沿っては,断層露頭は確認されていない(図2−3−1−7。後述する反射法地震探査の結果,本リニアメントは断層崖でなく海食崖である可能性が高い。宮の下〜氷見では,MT面は結晶片岩礫(円〜亜円礫)層および扇状地堆積物である和泉層群起源の径10cm前後の砂岩礫層(亜角礫〜亜円礫)で構成される。本堆積物の最上位層は,表層数cm程度は赤色風化しており,礫もややクサレ礫化している。またMT面は南方に緩傾斜していることから,南側に伏在断層が推定されている(岡田,1973)。さらに,MT面の下位には細礫層・砂層互層で構成される岡村層相当層が分布し,MT面の基盤を構成している。

(3) 岡村断層

@ Ok−1

小松町岡村〜西条市坂元に延びる本リニアメントに沿っては断層露頭は確認できなかった(図2−3−2−1)。最西端の天神池南では,道路の屈曲などから,横ずれ地形が推察できる。西条市上の浦付近では,リニアメントは山地とLU面との境界として確認され,坂元ではLU面上に低崖(比高1.0m程度)として観察できる。

A Ok−2

西条市宮の下〜西田に延びる本リニアメントに沿っては,断層露頭は確認できなかった(図2−3−2−2)。しかし,LU面と沖積層の境界およびLU面上に0.5〜1.0m程度の比高を示す北側低下の低崖が直線状に観察される。この低崖は右横ずれ変位が卓越する小松断層と岡村断層の引張性のステップ(約2km)に形成された正断層群に対応するものと推察される。

B Ok−3

本リニアメントは西条市北山〜新田へと延びる(図2−3−2−2)。本リニアメントは山地と平野の地形境界をなしており,沖積錐上にも比高数10cm程度の低崖が観察される。加茂川右岸では,比高約1mの低断層崖が沖積氾濫原上に形成されており,その走向はN70°Eである。岡田(1977)は,本低断層崖は約2,000年前よりも新しいと考えられる自然堤防ないし礫錐を切断しているとしている(図2−3−5−3)。

西条市氷見南方尾土居の高速道路橋架下では,和泉層群中に破砕帯が観察できる。和泉層群は砂岩優勢の砂岩泥岩互層からなり,N70°E・70°Sの走向・傾斜を示す。この北側には岡村層が広く分布している。本地域の岡村層は,径2〜5cmの砂岩礫(円〜亜円)を主体とした細礫層と砂層との互層からなり,全体的に10°前後で北へ傾斜している。また,東方の西条市湯ノ谷では,比高約1〜2m程度の崖地形が観察できる。

本リニアメント西方延長には,以下に示すとおり,和泉層群と岡村層との地質境界断層の露頭が報告されているが,リニアメントは判読されない。。

切川において,北側の岡村層と南側の和泉層群とが接触する断層露頭(OK−4)が報告されており(岡田,1973),その報告によると,境界面はN78°E・88°Nであり,和泉層群側には幅約2mの断層粘土が存在し,幅10数mにわたって角礫化している。

岡村南方(OK−2)では,和泉層群が古期の扇状地層と逆断層状の関係にある露頭が報告されており,その境界面はEW・80°Sである。(永井,1955)。

大谷池南方(OK−1)では,かなり固結した砂礫層が幅約20cmの断層粘土を介して和泉層群と接する(N81°W・61〜72°N)露頭が報告されている(岡田,1973)。

C Ok−4

西条市西泉〜西田にかけて延びる本リニアメントに沿って断層露頭は発見されなかった(図2−3−2−2。しかし,比高0.5m程度の低崖がLU面中に観察できる。またその西方延長では,MU面と扇状地との境界となっており,比高は約1.0m程度である。

D Ok−5

西条市須之内に存在する本リニアメントに沿っても断層露頭は発見されなかった(図2−3−2−3)。本リニアメントに沿ってLV面あるいはA面に比高約50cm程度の低崖が存在する。

E Ok−6

加茂川を挟んで西条市須之内〜西之河原に延びる本リニアメントに沿っても断層露頭は確認されなかった(図2−3−2−2)。A面あるいは沖積面に比高約50cm程度の低崖が比較的直線状に連続する。しかし,加茂川の近くでは河川侵食のためその地形的特徴は失われている。

F Ok−7

西条市の加茂川〜室川に連続する本リニアメントに沿っては断層露頭は発見できなかった(図2−3−2−3)。しかし,リニアメント南方500mの加茂川右岸では和泉層群中に破砕帯が確認された。本リニアメントは山地と平野の地形境界であり,山地斜面基部,空中写真判読結果同様,LU面および沖積錐上に比高1〜2mの低崖が観察できる。

また本リニアメント沿いでは,高速道路の建設に伴い1992年にトレンチ調査(OK−5)が実施されている。その結果,約5,000年前以前に大規模な地すべりが発生したこと,約2,400年前の地層まで液状化跡が認められること,および断層はトレンチの南側を通る可能性の高い事などが報告されている(佐藤ほか,1993)(図2−3−5−4)。

G Ok−8

本リニアメントは室川〜西条市飯岡に連続する。西条市上組では,比高1.0〜2m程度の低崖として連続する(図2−3−2−4)。

飯岡では,断層露頭の調査および多数のトレンチ調査が行われており,以下に簡単にまとめる。

稲見(1982)は飯岡において,岡村層を切った断層露頭を報告している。報告によると境界面はN80°E60°Nで,境界付近幅約1mにわたり粘土化している(図2−3−5−5)。

岡田(1988)によるトレンチ調査では,横ずれ平均変位速度は5m/1,000年,最新活動時期は5〜7世紀,活動間隔は約4,000年間で断層活動を4回程度と解読している。

Tsutsumi et al.(1991)によるトレンチ調査では,右横ずれ量は5〜7m,最新活動時期は4世紀以降,1つ前の活動時期は約3,000年前と報告されている。

山崎(1992)によるトレンチ調査では,最新活動時期は4〜7世紀以降,1つ前の活動時期は2,000〜3,000年前,活動間隔は約4,000〜11,000年間で数回かつ約11,000〜

15,000年間に数回と報告されている(図2−3−5−4)。

H Ok−9

西条市飯岡付近に分布する本リニアメントに沿っても断層露頭は発見されなかった(図2−3−2−5)。しかし,LV面上に比高約1.0m前後の低崖が0.5kmにわたり確認さ れる。

I Ok−10

新居浜市本郷〜西泉に連続する本リニアメントに沿っても断層露頭は発見されなかった(図3−3−2−6。本リニアメントは,LV面とA面あるいは沖積面との境界に比高1.5m前後の低崖(中萩低断層崖)として分布している。LV,LU,M面および沖積扇状地との地形境界はそれぞれ比高約3m,6m,13mおよび23mである。また岡田(1973)によると,横山丘陵(OK5)は中位段丘面相当の扇状地面が曲隆した丘であり,膨隆丘であるとしている。低崖を構成する段丘堆積物は一般に10〜20cm程度の片岩礫層(角礫〜亜角礫)である。また風化が著しく,礫もややクサリ礫化している。

新居浜市萩生(OK−11)においてLU段丘堆積物に対する14C年代測定が行われている。その結果は23,400±750年前および27,040+1040,−920年前である(岡田,1973;岡田・堤,1990)。

J Ok−11

新居浜市中萩町と北内町に認められる本リニアメントに沿っても断層露頭は発見されなかったが,本リニアメントは,沖積扇状地面上に認められる比高約1m前後の南傾斜の逆向き低断層崖(OK6)と対応する。

(4) 石鎚断層

@ Is−1 リニアメント

西条市香屋から新居浜市高祖にかけて分布するIs−1リニアメントは石鎚断層に対応する(図2−3−3−3図2−3−3−4)。山麓地と段丘との境界に認められるリニアメントで,崖錐や沖積扇状地に覆われ,連続性は悪い。

断層露頭は,小河谷川,東川の河床部で認められるが,それらはリニアメントの位置とは一致しない。

小河谷川河床部(Is−4)では,北側の低位段丘堆積物(扇状地層)と南側の三波川変成岩類とがシャープな面で接している断層露頭が観察できる。断層面はN75〜85°E・36〜45°Nの走向・傾斜を示し,境界面付近には破砕された岩脈,変質された灰白色の粘土物質を介在している。岡田(1991)が述べているように,断層は固結度の良い扇状地礫層を明らかに切り,低位段丘礫層堆積中にも変位はあったようであるが,それが作る地形面は切断されていないようである。

小河谷川河床部(Is−5)では,さらにIs−4の東南方で北側の岡村層と南側の安山岩質岩脈とが接している断層露頭が確認できる。断層面はN89°E・37°Nの走向・傾斜を示し,境界面付近には幅約30cmの断層粘土が伴われている。安山岩質岩脈は中央構造線に沿って中新世頃に貫入したものとされている(堀越,1964)。

東川河床部(Is−7)では,北側の低位段丘(扇状地)層と南側の三波川変成岩類とがシャープな面で接している断層露頭が確認できる。断層面は,N85°〜90°E・33°〜35°Nの走向・傾斜を示し,境界面付近には固結した粘土層と岩脈が認められる。

なお,現在では,護岸工事などで確認できないが,工事前に渦井川や尻無川の河床部でも断層露頭が確認されている(図2−3−6−2図2−3−6−3図2−3−6−4)。

A Is−2 リニアメント

Is−2リニアメントは国領川から新居浜市船木にかけて分布する(図2−3−3−4)。国領川と種子川に挟まれた地域では,空中写真判読によって,山麓地とLV段丘面の境界にLAリニアメントが判読される。このリニアメントは,山麓地とLV段丘面の境界に連続して分布する低崖に対応する。しかしながら,低崖の東方延長となる種子川河床では断層露頭を確認できなかった。

また,種子川以東は,現在ではリニアメント上には高速道路が建設されており,断層露頭は確認できなかった。

当リニアメントについては,岡田(1973)による以下の報告がある。

「西端部(国領川と種子川に挟まれた地域)は,最大比高差約20〜27m,7〜8mの崖がLT段丘面,LV段丘面とA段丘面との地形境界にそれぞれ形成されている。東部では個々の地形は明瞭だが,連続性にかける。それ以東になると沖積扇状地に覆われ不明瞭となる。東端部では沖積扇状地面と山麓の境界にリニアメントが認められ,土石流扇状地面の北端に西北西方向に向く溝状凹地が,土石流扇状地面の南側では扇状地面を切る比高5〜6m程度の崖が認められる。」

B Is−3 リニアメント

新居浜市元舟木付近に分布するIs−3リニアメントは,沖積錐上に分布し,断層は確認できなかった(図2−3−3−5)。延長距離が短いことから,人工による段差地形の可能性がある。

C Is−4 リニアメント

新居浜市大久保〜土居町入野にかけて分布するIs−4リニアメントは,石鎚断層に対応する(図2−3−3−6図2−3−3−7図2−3−3−8)。山麓地と段丘との境界を高速道路に沿って認められるリニアメントで,崖錐や扇状地に覆われるなどで連続性は悪いが,リニアメントに直交する小河川に右横ずれ屈曲が認められる。

断層露頭は,新居浜ゴルフ場の南東方,関川,西谷川,浦山川河床部で認められ,それらはリニアメントの位置とほぼ対応する。

新居浜ゴルフ場の南東方(Is−10)では,北側の結晶片岩を主体とする粗粒の礫層と南側の砂質のマトリックスに富むやや細粒な礫層とが接触している断層露頭が確認できる。断層面はN80゜W〜EW・80゜〜90゜Nの走向・傾斜を示し,境界面付近は幅50cmにわたって黒灰色の粘土となっている。岡田・堤(1990)によれば,地形から推定される石鎚断層線の位置から約20m北にずれているので,副次的な断層の可能性が高く,完新世には動いていないとみなされるとしている。

関川河床(Is−13)では,貫入岩と南側の泥質片岩(三波川変成岩類)が接触している断層露頭が確認できる。断層面はN45〜50゜Eでほぼ垂直の走向・傾斜を示し,境断層付近には,幅10cm前後の岩脈由来の黄橙色の断層ガウジが発達している。

西谷川左岸河床(Is−15)では,北側の頁岩勝ち互層と南側の貫入岩が接する断層露頭が確認できる。断層面はN60゜E・40゜Nの走向・傾斜を示し,境界付近は頁岩が角礫〜粘土状を呈している。貫入岩は堅固で,破砕を受けておらず,破砕帯の生成は貫入以前と考えられる。

西谷川の右岸側では護岸工事により断層は確認できなかった。

浦山川河床部では,両岸で断層露頭を確認することができる。左岸側(Is−17)では,和泉層群破砕帯中に破砕された灰白色の岩脈が挟まれ,N56゜E・67゜Nの面で結晶片岩の断層破砕帯と接する断層露頭が確認できる。右岸側(Is−18)では,三波川変成岩類と流紋岩質岩石が幅約1.2mの破砕帯を介して接する断層露頭が確認できる。この破砕帯と流紋岩質岩石の上に礫層が載り,礫層は流紋岩質岩石と接している。断層面の走向・傾斜はN86°W・56°Nである。

なお,現在では,護岸工事などで確認できないが,工事前に市場川河床部や小さな河谷部で断層露頭が確認されている(図2−3−6−6図2−3−6−7図2−3−6−8)。

D Is−5 リニアメント

Is−5リニアメントは,Is−4リニアメントの南側を新居浜市大久保〜土居町上野にかけて分布する(図2−3−3−6)。高速道路南側の山麓地に位置するが,断層露頭は発見されなかった。本リニアメントは,変位地形である可能性が低く,断層があったとしても第四紀以前に活動したものであると考えられる。

E Is−6 リニアメント

Is−6リニアメントは,土居町栗谷〜伊予三島市豊岡町岡銅にかけて分布する(図2−3−3−9)。当リニアメント直上には,現在では高速道路が建設されており,断層露頭は確認できなかった。

(5) 畑野断層

@ Ht−1 リニアメント

Ht−1リニアメントは,土居町上野から田尾にかけて分布し,「新編 日本の活断層」(1991)の畑野断層西半部(確実度T)に相当する。

本リニアメントは,浦山川沿い,古子川沿いおよび土居町根見では,中位段丘面,低位段丘面と沖積面とを境とする低崖に対応し,土居町畑野付近のHT段丘面および開析谷の右横ずれは系統的で,非常に直線的で明瞭ある。当リニアメント沿いでは,9つのトレンチ調査が実施されている。

土居町畑野の西谷川左岸のふくたけ工場敷地内の法面(Ht−1)で,北側の和泉層群と南側の礫層が接する断層露頭が確認できる。境界面は,N82°E・69°Sの走向・傾斜を示す。Grapes and Takahashi(1987)によれば,断層面にみられる条線がN17°E・39°Sの走向・傾斜を示すことから,本断層の最新活動は右横ずれ成分を有する正断層であると述べている。さらに,和泉層群とこれを覆う新期堆積物との不整合面を基準に断層の変位量を測定し,測定結果から,畑野断層の垂直変位速度:1.7mm/年,水平変位速度:約3.3mm/年を算出している。

A Ht−2 リニアメント

土居町入野に認められる岡村層から構成される小地塁は,南北を低崖によって限られており,南側をHt−2リニアメントが判読される。現地では,断層露頭は確認できなかった。

B Ht−3 リニアメント

Ht−3リニアメントは,土居町中村付近に分布している(図2−3−3−9)。沖積面上の低崖に対応するリニアメントで,現地では,断層露頭は確認できなかった。

C Ht−4 リニアメント

Ht−4リニアメントは,東森付近に分布している。(図2−3−3−9)。LU段丘面上の低崖に対応するリニアメントで,現地では,断層露頭は確認できなかった。

D Ht−5 リニアメント

Ht−5リニアメントは土居町東森から土居町大空にかけて分布する(図2−3−3−10)。東森では2条の崖および低崖として,大空ではA段丘上の低崖として認められる。現地では,断層露頭は確認できなかった。

E Ht−6 リニアメント

Ht−6リニアメントは土居町北野に分布する。直線状の谷および,沖積面上の逆向き低崖として認められる(図2−3−3−10)が,断層露頭は発見されなかった。

(6) 寒川断層

@ Sn−1 リニアメント

Sn−1リニアメントは寒川町大町〜岡川にかけて分布する(図2−3−3−10)。LU,LT,MU,M T,Hの各段丘と沖積面とを境とする低崖と対応し,累積的な変位が認められる。また,国道11号線沿いに認められるリニアメントは逆向き低崖と対応している。現地では,断層露頭は発見されなかったものの,低崖は明瞭で,連続性が良い。