段丘面の推定年代および対比を表2−2−2に示す。
表2−2−2 段丘面の層序表
つぎに各段丘面について説明する。
HT段丘面
本段丘は臼坂以西,金目川以東の山間部では山地内を流れる小河川沿いに,あるいは山地と平野の境界部に扇状地性の段丘面を形成しているが,分布は断片的である。
開析が進み,段丘外縁部は丸みを帯びている。尾根状を呈するところもある。また個々の段丘面は小面積である。M面群以下より傾斜が大きい。
HU段丘面
本段丘は臼坂以西,金目川以東の山間部では山地内を流れる小河川沿いに,また伊予三島市田尾および上柏町では山地と平野の境界部に扇状地性の段丘として断片的に認められる。HT面との比高は数mである。
段丘面の外縁部は丸みを帯びており,個々の段丘面は小さい。下位の段丘面とは有為な高度差をもち,急勾配である。
MT段丘面
本段丘は主に,山地より平野へと張り出す扇状地性の段丘として認められる。発達は悪く分布も断片的であるが,中山川沿いでは比較的広い段丘面を形成しており,ここでは現河床との比高は40〜50mである。
段丘外縁部は丸みを帯び,段丘面上にはわずかな起伏が認められる。開析が進んでおり,個々の段丘面は低位面群以下と比べて小さい。本段丘は開析度,上下の段丘面との関係から,南関東の下末吉面相当と推定される。
MU段丘面
本段丘も扇状地性の段丘面を呈しており,上位のMT段丘の数m下位に小分布する。寺尾,宮の下,豊岡町大町,上柏町では比較的広い段丘面を形成している。加茂川沿いに発達する段丘は,現河床との比高が25mほどである。
開析が進み個々の段丘面は小さいが,MT段丘より平坦である。段丘面上に小さな起伏が認められることもある。
本段丘は南関東の小原台面相当と推定される。
LT段丘面
本段丘面は,おもに扇状地性の段丘として寺尾,氷見,萩生,舟木などに断片的に分布するが,比較的広い段丘面を形成している。舟木では各谷川沿いに広い段丘面を形成している。ここでは下位のLU面とは数〜10数mの高度差をもつ。
段丘面は平坦であるが,開析はやや進み,段丘面の中央部まで谷が入ることもある。
本段丘面は開析度,上下の段丘との関係から武蔵野面相当と推定される。
LU段丘面
LU段丘面は本調査地域内で最も発達する段丘面である。特に具定町〜下柏町では最も広い段丘面を形成している。主に山地より張り出した扇状地性段丘を呈するが,中山川,加茂川,各谷川,関川などの大きな河川沿いにも広い段丘面を形成している。これらの河川では現河床との比高は5〜15mである。
本段丘は保存が良く,広い段丘面を形成している。段丘面上は平坦であるが,扇状地段丘を呈するところではしばしば小さな起伏が認められる。
本段丘の構成層中からは姶良Tn火山灰が報告されており(岡田・堤,1990;水野ほか,1993),南関東の立川面相当と推定される。
LV,LV'段丘面
LV段丘面も扇状地性の段丘を呈し,氷見,飯岡などで比較的広い段丘面を形成している。最も発達のよいのは萩生で,LU段丘の数m下位に平坦な段丘面を形成している。具定町〜下柏町ではLU段丘の上に小規模に張り出す扇状地として認められる。中山川や関川などの大きな河川沿いでは現河床との比高は数〜10数mである。
また上野,内の川ではLV段丘は細分され,LV段丘の数m下位あるいはLV段丘を覆う扇状地を形成している。これら二つの段丘面は時代的な差はないと思われるため,下位の段丘をLV'段丘とした。
段丘面の保存は極めて良く,あまり開析されず平坦である。 本段丘は南関東の青柳面相当と推定される。
A段丘面(AT,AU,AV段丘)
本段丘は調査地域内に分布する最下位の段丘である。主に大きな河川沿いに現河床との比高数〜10mで分布する。時に扇状地性の段丘を呈し,萩生では最も広い段丘面を形成している。なお本段丘は氷見,野田では2段,川口(渦井川沿い),内の川(関川沿い),西谷川(関川の支流)沿い,浦山川沿いでは3段に細分され,これらを上位よりAT,AU,AV段丘とした。しかし,これらの呼称は各地域で細分される段丘を便宜的に区分したものであって,各地域間で対比できるものではない(たとえば野田でのAU段丘と浦山川のAU段丘は対比されない)。
これらの他に土石流扇状地,崖錐,地すべり地形(新・旧)も区分した。
表2−2−3 段丘一覧