7−1−1 分布形態

活断層研究会(1991)によれば,伊予断層は双海町高野川から砥部町麻生にかけて14qの長さの活断層とされている。また,地質調査所(1993)によっても,ほぼ同じ区間の断層が図示されている。

空中写真判読調査によれば,伊予断層に沿っては,変位地形の可能性がある

A〜Cランクのリニアメントが双海町高野川から伊予市八倉まで,約14.5qにわたり追跡される。双海町高野川から西側は,海のため,伊予市八倉から東は,重信川および砥部川による沖積平野のため,リニアメントは追跡できない。

リニアメントは,西端伊予市双海町高野川から伊予市下吾川までは,ほぼ一条で直線的に連続するが,伊予市下三谷から八倉にかけては,2条〜3条のリニアメントにわかれている(図7−1−1)。南側の右ずれ変位地形を伴うリニアメントは,和泉層群もしくは,八倉層からなる山地に入ると追跡できなくなる。

一方,東部における北端のリニアメントは湾曲し,伊予断層に特徴的な右ずれ変位地形は伴わず,かつ縦ずれが卓越するように見える。しかも,本リニアメントは,右ずれを示すリニアメントが不明になる地点より,さらに東方へ延長でき,伊予市八倉の沖積面で不明になる。

このように,伊予断層の東部は,変位が2〜3条の断層に分散している可能性がある。また最新の断層活動は,右横ずれを示すリニアメントから,北側のリニアメントへ移行している可能性もある。このようなリニアメントの分布形態は,伊予市八倉〜砥部町麻生付近が,伊予断層の東端を示していると推定される。

一方,リニアメントから推定される第四紀後期に活動した伊予断層は,高野川で終了するのではなく,更に西方の海域へ延長している可能性が高い。

地表踏査によれば,リニアメントの対応する断層露頭は,双海町 高野川(Iy−3, 5)や伊予市 三秋(Iy−8) で観察できる。

その他の地点では,リニアメントと一致する伊予断層本体と判断してよい断層露頭は,確認できなかった。このわずかな断層露頭から得られる伊予断層の特徴は,以下の通りである。

@ 伊予断層は,破砕帯から三波川変成岩類起源の破砕物が確認されたことから,中央構造線本体の地表断層と推定される。地表の断層露頭から推定される断層面は,鉛直に近い高角度で北へ傾斜している。

A 伊予断層は,LT面段丘堆積物まで変位させていることが,露頭から確認できる。より,新しい時代の堆積物への変位を確認するためには,トレンチ調査が必要である。

反射法地震探査によれば,A測線では,高角度で北傾斜する南麓の断層が推定でき,伊予断層に対応する。また,リニアメントの 100m南側にも,北落ちの断層が推定される。これらから,伊予市向井原付近には,伊予断層によるプルアパ−トベ−ズンが形成されている可能性がある(図7−1−2)。

以上をまとめると,伊予断層が第四紀後期に活動した可能性のある部分のうち,陸上で推定できる区間は,双海町高野川〜伊予市八倉の約14.5qである。すなわち,活断層としての伊予断層は,14.5q以上の長さと評価できる。

図7−1−1 伊予断層のリニアメント分布形態

図7−1−2 伊予市向井原付近の伊予断層によるプルアパ−トベ−ズンの可能性