(3)静 補 正

発震点および受振点の標高差、表層付近での弾性波の速度差による反射波の遅速、表層の厚さの変化による反射波の遅速などを補正する(前一者は標高(地形)補正、後二者は表層(風化層)補正と呼ばれる。)。これを実施しない場合には構造解釈に誤りをおかしたり、水平重合法において反射波そのものを破壊することがある。

具体的には、各発震点・受振点の標高の移動平均したものを仮想の基準面とし、あたかもその仮想基準面上で測定が行われたかのように各発震点、各受振点の記録を上下する。なお、本処理での最終の基準面は標高50mとした。

一般に,表層(風化層)補正値は、ショット記録の初動もしくは別途実施されるチェクショットから屈折法的解析を行って求められる。チェックショットによる手法は主として長周期の表層の厚さの変化を見積もり,重合後に補正を行う。これに対して,ショット記録(反射法探査の本調査データ)の初動を用いる手法は短周期の表層の厚さの変化を補正するのに有効である。補正は主に,重合前に施される。

通常,陸上の浅層反射法では後者の全ショット記録を用いる方法が採られる。解析方法は,はぎとり法やタイム・ターム法などの屈折法探査で用いられる解析方法を応用し,補正値を求める。近年は,反射法探査のデータ取得チャンネル数の増加に伴い,屈折トモグラフィーによる表層解析が行われるようになっている。本解析でも屈折トモグラフィ解析を実施した。

当初,基盤上面と推定される反射イベント以深のより明瞭なイメージングをめざした。そのために,地表から深度20mを一定速度(1500m/sec)に置き換えた場合の補正値を用いて,以後の解析を実施したが,基盤上面以深の構造は明確に抽出されず,浅部(地表から10m以浅)では,過補正となった。一方,標高補正のみの重合断面との比較において,基盤上面以深の反射イベントは低周波であり,表層補正を適用するか否かで多少形態が変化するものの大きな違いは認められなかった。こうした状況をふまえ,地表付近の構造を抽出するために,あえて表層補正を適用しないで,以後の解析を行った。