物理探査の結果、岩井地区ではリニアメントに沿った部分に、低比抵抗帯及び低速度帯が認められた。また、平久里下地区については、リニアメント通過位置にて、トレンチ調査を行ったが、変位は認められなかった。しかし、ボーリング調査では、リニアメントを挟んで段丘面に比高差が認められた。さらに、両調査地域ともに、リニアメントの北側部分には、リニアメントに沿って破砕された地層分布が認められた。
一方、南断層中部〜東部地区にかけての地区においてリニアメントを挟んで分布する段丘面の形態は、今年度調査を実施した西部地区の平久里下での分布形態と類似する。しかし実際には、詳細な調査を行っていないため、リニアメントを挟んだ段丘面の分布について、平久里下地区と同様の形態を示すかどうかについては、不明である。
従って、南断層全体について評価するためには、南断層中部地区・東部地区での調査を実施し、データを集める必要があると考えられる。
また、南断層中部地区・東部地区でのトレンチ調査法については、直接変位を確認できる可能性のある方法であるが、平成10年度の調査では、南断層沿いで平久里下地区以外にリニアメントを覆う、変位を受けたと考えられる段丘面が分布しない。そのためにトレンチ調査を適応するのは、困難であると判断される。
よって、南断層中部地区・東部地区でリニアメントの活動によって、変位を生じていることを確認する調査方法としては、平久里下地区で実施した調査と同様に、各段丘面上にてボーリングを実施し、岩相及び年代の対比を行う方法が有力であると考えられる。
この方法は、南断層の中部地区および東部地区にて有効であると考えられる。