8−1 鴨川地溝帯南断層(西部地区)調査結果

(高崎−平久里下)

調査結果をまとめると以下のようになる。

断層について 破砕された基盤の泥岩(一部熱水変質を受ける)等の弱線部は、リニアメントに完全には一致せず、ある程度(40m以上)の幅を持って分布する。そのうち、主として保田層群の泥岩層が強く変質及び破砕されている(岩婦地区では境界付近の三浦層群も破砕される)。しかし、未固結な新しい堆積物には、いずれの地区でも変位は認められなかった。

変位地形 平久里下地区では、リニアメントを挟んで同一段丘面と考えられるU面(沼T面相当)が、2.2〜3.1mの高度差を持つ。一方、V面は変位していないと考えられる

最新活動時期 高崎地区では、2000年前の年代測定結果を示す未固結層が、変位していない。また、平久里下地区では、段丘面の年代測定結果から、変位を受けている可能性のある段丘面が7000年前を示し、一方、確実に変位していない段丘面の年代が、1500年前を示す。以上から、岩井地区から平久里下地区までが一連とすれば、7000年前以降、2000年前以前に活動した可能性がある。

鴨川地溝帯南断層の西部地区のうち、岩井地区では、リニアメント(山地部と平地部との境界)と基盤破砕部は、東側ではほぼ一致し山地北側に位置するが、調査地西側では、より北側に離れる傾向が認められる。また約2000年前以降には、活動している証拠は認められない。

平久里下地区については、ボーリングの結果及び段丘面の年代測定の結果から、7000年前以降、1500年前以前または3000年前以前に活動した可能性がある。

既存の研究では、Matuda et al (1978)、中田ほか(1980)によれば、沼面の分布状況から、約6000年前をはじめとして、元禄関東地震とほぼ同様の地殻変動を示す地震が、平均2000年間隔で3回あったとしている。また、熊木(1999)等によれば、房総半島南部では、平均500年〜600年の間隔で、隆起現象を伴う地震が発生してきたとしているが、活断層の活動との関係については、その関係を明らかにする必要性を述べるにとどまっている。

また、西部地区を一連のリニアメントとして評価し、7000年で2mの変位を示すとすれば、断層の変位は0.3m/1000年という平均変位速度となる。これは「日本の活断層」によるとB級の活断層(変位量;0.1−1.0m/1000年)に対応し、逆に従来推定されている鴨川地溝帯南断層の活動度と同様である。

しかし、今回認められた2〜3mという変位が、1回の活動を示しているという根拠は、今年度までの調査では確認できなかった。たとえば、今回認められた変位が、複数回の変位の合計であるとすれば、1回の変位量は、今回得られた結果よりもかなり小さいものとなる。