(6)総括

先行して実施した右岸地区および、続いて実施した左岸地区ともに、リニアメント通過位置でトレンチ調査を実施した結果、いずれも基盤岩に断層はなく、これを覆う表層堆積物にも、変形構造は認められなかった。

これに対し、リニアメントを挟んだ、南北それぞれU面でのボーリング調査では、

1)段丘面の標高差は約3.0mで、南側が高い。

2)基盤上面の高度差は約3.1mである

3)左岸南側U面の表層は、崩積土に覆われているため、やや不明確であるが、離水時期からみた南北段丘面の高度差は2.2mである。

4)段丘面の分布及び14C年代測定等の結果から、U面は同時期の段丘面である可能性が高い(14C年代で、ほぼ7000年前(7330yBP)の段丘面として検証)

5)リニアメントを挟んだボーリングコアの岩相は、大きく異なるために、基盤を覆う堆積物は直接対比できない(堆積環境が異なるためか)

また、南北両V面の形成時代は、2000−3000年前と考えられるが、V面が変位を受けているかどうかについては、確認できなかった。

いずれの結果でも、U面の段丘面については、見かけ上、いずれの結果もリニアメントを挟んで南側が2〜3m程度高いという結果が得られた。しかし、リニアメント位置には、断層は認められなかった。通常、河川の浸食によって形成される段丘面の標高は、下流が低くなるように分布する。しかし、今回の調査結果では、いずれも逆に下流側が高い結果が得られている。この地形を生じた原因の一つとしては、活断層の活動による可能性が考えられる。また、W面については、1500年前という年代が得られている。さらにリニアメント通過推定位置を覆って連続して分布しており、変位は認められない。

一方、県道工事によって認められた南北2カ所の露頭は、リニアメントよりも南側部分では、三浦層群が分布する。ここで認められた泥岩は、トレンチ底で認められた岩相と同様である。逆にリニアメント北側の露頭では、保田層群が分布する。これは、右岸ボーリングで認められた基盤部分の破砕を受けた岩相と同様である。

以上より、平久里下地区での断層は、低地面での通過位置は不明確であるが、U面の形成後(7000年前)からW面の形成前(1500年)に2.2〜3.1m程度の変位を生じる活動をした可能性が考えられる。

また、断層の位置としては、U面を変位させている可能性を考慮すると、県道工事部分で凹地を通り、No.Cボーリングよりも南側を通過し、トレンチ掘削を行ったV面の北側−という推定がされる。また、左岸部分でも、トレンチ掘削箇所の北側を通っていると推定される。また、工事部の露頭では、南側露頭の端から約5〜15m程度の間に位置すると考えられる。断層通過位置が不明確となっている原因として、断層自体の活動性が低く、変位が明瞭でなくなってしまう可能性と、調査地付近よりも北側では、非常に地すべりが発達しているため、たとえ変位を生じたとしても、地すべりの活動によって、埋積されてしまっている可能性があげられる。