(1)鏡下観察結果

試料番号:b` 14.0〜14.30m

岩石名:泥岩(破砕)

T. 岩石全体の特徴

帯褐暗灰色,軟質の破砕を受けた泥岩で,断層ガウジと言ってもよい.多数の小剪断面が約60゜の高角で傾斜しているコアを水平に切断した.

薄片内で明瞭な横ずれ変形構造が認められるが,これは現地でも横ずれ剪断の成分があることを意味する.灰色,一部淡緑色の幅0.05〜2mm(最大7mm)のレンズ状部を多数含む.前者は主体である泥岩片で,スメクタイト様粘土鉱物・イライト・緑泥岩を主とし,少量の炭酸塩鉱物を伴う.斜長石や少量の苦鉄質鉱物片が散在する.一方後者の淡緑色部は玄武岩質水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)で,緑泥石(スメクタイト化)やパンペリー石を生じている.

 その他の岩片・鉱物片として玄武岩・蛇紋岩(変質)・ドレライト・斜長石・石英・苦鉄質鉱物・不透明鉱物・白雲母などがある.

 変質鉱物は主としてスメクタイト様粘土鉱物で,泥岩にもそれが剪断を受けた基質にも大量に生成している(膨潤性著しく,薄片は油擦りとなった)が,より基質に卓越する(泥岩片にはイライトや緑泥岩の多く残存している).

U.岩片・鉱物片

(1)泥岩

角,レンズ状.幅0.05〜2mm,最大7mm.スメクタイト様粘土鉱物・イライト・緑泥岩を主とし,少量の炭酸塩鉱物を伴う.干渉色が高い粘土鉱物が多いため,クロスニコルで基質部より,濃い黄褐色に見える.これは,スメクタイトに対する

イライトの比が基質部より多いためであると考えられる.この中に斜長石や少量の苦鉄質鉱物(変質)・石英などが散在する.

(2)玄武岩質水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)

角,径5.6mm.ガラス(変質)・玄武岩・斜長石・苦鉄質鉱物(かんらん石→蛇紋岩→変質鉱物と変化?)などの破片からなる.変質し,緑泥岩(さらにスメクタイト化)・パンペリー石などが生成する.

(3)玄武岩

角,径0.1〜0.4mm.インターサータル組織を示す.ガラスは変質し,緑泥石等生成.

(4)蛇紋岩

角,径0.1〜0.2mm.クリソタイル主体であったらしいが,さらに変質鉱物(パイロオーライト?)に交代されている.

(5)ドレライト

角,径0.3mm.長柱状斜長石と変質した苦鉄質鉱物からなる.

(6)斜長石

角,径0.02〜0.3mm.

(7)石英

角,径0.05?〜0.15mm.斜長石に比べて,非常に少ない.小型のものは確実に石英かどうか不明.

(8)苦鉄質鉱物

角,柱状.長径0.05〜0.1mm.褐色の粘土鉱物に交代される.

(9)不透明鉱物

角,径0.01〜0.1mm.

(10)白雲母

板状,長径0.05〜0.1mm.

V.基質

主として定向配列する微細なスメクタイトからなり,微細な結晶や不透明鉱物が散在する.

W.変質鉱物

(1)スメクタイト様粘土鉱物

基質に卓越し,泥岩片にも生成する.玄武岩質岩のガラスや苦鉄質鉱物片をも交代.

(2)イライト

泥岩片に緑泥石などとともに生成.斜長石の一部を斑点状に交代(絹雲母).

(3)緑泥岩

泥岩片にイライトなどとともに生成.また,苦鉄質鉱物やガラスをも交代(さらにスメクタイト様粘土鉱物に交代).

(4)パンペリー石

水冷破砕岩礫に生成している.

(5)酸性鉱物

苦鉄質鉱物?を交代している.

X.変形構造

多数の非対称的な複合面構造が発達する.剪断破壊面に沿う粒子の回転や剪断面で切られる粒子のずれから判断すると,薄片内では左ずれ変形が卓越する.

試料番号:bb 11.65〜11.80m

岩石名:泥岩(破砕)

T.岩石全体の特徴

 暗灰色軟質の破砕を受けた泥岩で,幅0.5〜7mmの灰〜灰白色のレンズ状部を多数含み,微褶曲する小剪断面が多数発達している.断層ガウジと言ってもよい.小剪断面群は約60゜の高角で傾斜しており,薄片はコアを水平に切断した面で作成している.薄片内で明瞭な横ずれ変形構造が認められるが,これは現地でも横ずれ剪断の成分があることを意味する.

 岩片鉱物片は多数の泥岩のほか,水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)・酸性凝灰岩・斜長石・玄武岩・細粒砂岩・石英・苦鉄質鉱物・不透明鉱物など.変質鉱物は主としてスメクタイト様粘土鉱物で,泥岩にもそれが剪断を受けた基質にも大量に生成(薄片は油擦り)する.しかし,より基質部に卓越する.泥岩片にはイライトや緑泥石も多く残存する.

U.岩片・鉱物片

(1)泥岩

角,レンズ状.幅0.05〜3mm.スメクタイト様粘土鉱物・イライト・緑泥石を主とし,ときに炭酸塩鉱物を伴う.しばしば斜長石片他が散在.

(2)水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)

角,径2.6mm.多量のガラス(脱ハリ)と少量の斜長石片などから構成.

(3)酸性凝灰岩

角,径0.1〜0.4mm.インターサータル組織を示す.ガラスは変質し,緑泥石等生成.

(4)斜長石

角,径0.02〜0.2mm.

(5)玄武岩

角,径0.1〜0.4mm.インターサータル組織を示す.まれに斜長石斑晶あり.

(6)細粒砂岩

角,径0.4〜1.5mm.径0.05〜0.2mm.斜長石や石英を主とし,苦鉄質鉱物(炭酸塩鉱物化)・玄武岩等を含む.

(7)石英

角,径0.5?〜0.1mm.

(8)苦鉄質鉱物

角,柱状.長径0.05〜0.4mm.炭酸塩鉱物化するものや緑泥石化(さらにスメクタイト化)するものがある.

(9)不透明鉱物

角,径0.005〜0.4mm.

(10)普通角閃石

角,径0.08〜0.1mm.X‘=淡褐色,Z’=緑色.微少量.

V.基質

定向配列する微細なスメクタイトが卓越.微細な結晶片や不透明鉱物が散在する.

W.変質鉱物

(1)スメクタイト様粘土鉱物

基質に卓越し,泥岩片にも生成.また,玄武岩片や苦鉄質鉱物をも交代する.

(2)イライト

泥岩片に緑泥石などとともに生成.

(3)緑泥石

泥岩片や玄武岩片・苦鉄質鉱物片に生成.しばしばさらにスメクタイト様粘

土鉱物化.

(4)炭酸塩鉱物

泥岩としたものの一部には微細な炭酸塩鉱物が卓越する場合がある(幅0.1〜5mmのレンズ状部).

X.変形構造

多数の非対称的な複合面構造が発達する.剪断破壊面に沿う粒子の回転や剪断面で切られる粒子のずれから判断すると,薄片内では右ずれ変形が卓越する.