5−6 微化石分析(石灰質ナンノ化石)

微化石とは、顕微鏡レベルで同定が行われる微小な化石の総称で,体長が普通1mm以下で,大型化石に比べて産出頻度が大きく、ボーリングコアのような少量の試料中にも多く含まれており、統計的処理が行え、古環境・堆積年代の解析に大変有効とされる。

また、殻の成分により石灰質・珪酸・リン酸・有機物の4つに大別される。

1 石灰質(Calcareous)

a 有孔虫(Foraminifera)・・・原生動物の根足虫類 

b 貝形虫(Ostracodes)・・・節足動物の甲殻類,別名カイミジンコ

c ナンノ(Nanno plankton)・・・褐色植物のハプト藻類

2 珪酸(Siliceous)

a 放散虫(Radiolaria)・・・原生動物の軸足虫類

b 珪藻(Diatoms)・・・褐色植物の珪藻類

c 珪質鞭毛藻(Silicoflagellates)

3 リン酸(Phosphatic)

a コノドント(Conodonts)・・・絶滅した海生化石動物

4 有機物(Organic)

a 渦鞭毛藻(Dinoflagellates)・・・渦鞭毛植物の渦鞭藻類

b 花粉・胞子 (Pollen, Spore)・・・植物

このうち、今回の調査では、石灰質ナンノプランクトンを用いた。プランクトンとは、水中で生活をする生物のうち、運動力が微弱あるいは欠いていて、水中に浮遊する生物の呼称で、たいていは顕微鏡的な大きさをしている。それらのうち、プランクトンネットを通過してしまうものを、特にナンノプランクトンと呼ぶ。石灰質ナンノプランクトンとは、そのうちで、体表に石灰質の微小な殻を持っている一群のプランクトンのことを示す。代表的なものに、コッコリソフォリッドといわれる単細胞の鞭毛藻類がある。

コッコリソフォリドの細胞を覆う石灰質の殻の一枚一枚をコッコリスと言い、コッコリソフォリッドが死ぬと、コッコリスが化石となって残留する。基本的には、コッコリスの形状、産出状況、大きさ等を観察することによって、群衆毎の分類を行い、初産出と絶滅の組み合わせによって、時代を決定する。

また、第三紀層から産出するディスコアスターなどは、すでに絶滅しておりその分類学上の位置が不明であるが、コッコリスと共産することからコッコリソフォリッドと類縁関係にある生物の遺骸と考えて、ナンノプランクトンとして扱われる。

石灰質ナンノ化石の観察のための処理手順は、以下のように示される。

・対象となる岩を粉末とし、中性化した水と混ぜ、縣濁液を作成する

・縣濁液を、カバーグラスの上に静かに落とし、広げて乾燥させる

・乾燥させたカバーグラスをスライドグラスに封入する

・スライドグラスの封入剤を乾燥させて、固定させる

以上の手順を用いて、スミアスライドの作成を行う。作成したスミアスライドは、偏光顕微鏡を用いて、観察を行う。観察は、ある定量(200)の個体数カウントを行い、その中に含まれる群衆の割合を調査する。また、それとは別に時代を決定できるインデックスを調査するために、スライド全体の観察を行う。