(4)竹ノ中地区

全体としては、リニアメントが比較的連続する。また、各段丘面が断層変位を受けないで形成されたとすれば、その分布高度が、通常の河川によって形成されたとは考えにくく、段丘形成史を推定することが困難になることから、リニアメントで分割された各地域は、変位の影響を反映している可能性が高いと考えられる。しかし、踏査の結果からは、第三紀層の泥岩のリニアメント通過位置において、顕著な鏡肌の認められる破砕帯が見つかったものの、いずれも密着しており、地質断層の可能性が高いと考えられる(岩盤露頭では被覆堆積物は分布しない)。それ以外には、明確な断層変位の証拠は見いだせなかった。

三原川沿いに竹ノ中地区まで、段丘面の区分を行った。その結果、沼W面〜沼T面及び沼T面よりも上位の面が3面の合計7面が認められる。

沼W、V面は海岸部付近に分布する。沼U面は河口より約3.5kmの和田町内田地区まで点在して認められる。また、同鳥井畑北側より再び分布する。沼T面は海岸部より三原ダムで水没している区間をのぞき、ほぼ連続して分布する。沼T面よりも古い面は和田町内田地区よりも北側部分で認められる。2面がほぼ連続しており、その間にも1面が認められるが、連続性に乏しく、はっきりしない(以下PU、PT面とする)。

竹ノ中のリニアメントを挟んで北側と南側において、沼U・T面は、ほぼ同じ高さで連続する。これは、沼U面及び沼T面が、変位を受けていないか、変位を受けていても河川勾配による河床高の差分だけで、わずかであることが指摘される。他には、対比できる段丘面が認められないため、この対比が最も適当と考えられる。PT面はリニアメントを挟んで5m程度の高度差が認められる。PU面は、リニアメントを挟んで20m程度の高度差が認められる。両段丘面ともに浸食が進んでいるため、分布が限られているが、浸食の程度や分布高度などが類似しているため、同一段丘面であると同定した。以上より、PT,PU面の各段丘面の高度異常は累積変位を示している可能性が指摘できる。

なお、精査では、東地区を4本のリニアメントに囲まれた5つのブロックに区分しているが、海岸より対比を行った結果では(主として4万分の1空中写真を使用)、最南部の主リニアメント以外、段丘面の分布高度異常は不明確であった。そのため、最南部のリニアメントよりも北側のものについては、副断層的な要素が強いのではないかと推定される。

実際の活断層履歴調査を行うとすると、比高差がかなりあることから、段丘面間の直接対比はかなり難しいと考えられる。また、道路及び河川もかなり屈曲していることから、物理探査によるアプローチは難しいと思われる。

図3−1−4 竹ノ中地区精査結果