空中写真判読によって、4条の明瞭なリニアメントが認められ、地形的にそれぞれの特徴を持ったブロックに区分されることが確認された。それぞれのブロックに認められる段丘面は、特徴ある発達形式を示し、断層活動によって形成された結果であると推定した。
・概略
竹ノ中地区は、地形的に南流する三原川を中心として、それぞれ南北に山地部が発達している。三原川の周囲には数段の段丘面が発達する。主な河川としては中央部を南流する三原川に上三原橋付近で合流する小河川、さらに五十蔵橋付近で合流する小河川から構成される。
リニアメントは全体的に東西方向の延長をもち、4条程度認められる。そのうちもっとも南側のものが長い延長を示す。
・山地
全体的に急峻な地形を構成しており、他の地域と異なり、リニアメントを挟んで北側が埋積されているような傾向は見受けられない。また、今回調査した区間では、一部地域を除き、顕著な崩壊性の地形は認められない。例外として、宝性院付近では、崩壊性の地形が発達している。もっとも南側のリニアメント沿いの山地部では、宝性院南方及び布野橋南方において、北向きの顕著な三角末端面が認められる。五十蔵橋南方の道路建設現場の切土では、リニアメントの通過位置において亀裂が発達し、鏡肌が顕著な断層露頭が確認された。その延長方向はほぼ東西方向であり、リニアメントの方向性と一致する。しかし、この断層の亀裂は、いずれも密着し固結しているため、地質断層の可能性が高い。
地質は、全体的に固結した泥岩を主体としており、一部に凝灰岩、細粒砂岩が認められる。リニアメントの前後で、大きく岩相が変化する傾向は認められない。
・低地
低地は、国土地理院(1982)による区分に従って、三原川沿いに海岸部より竹ノ中地区まで、段丘面の判読を行った。その結果、大きく区分すると、段丘面は新しい方から沼W面〜沼T面、およびそれよりも古い面が2面の合計6面に区分される。
沼W面および沼V面は、三原川河口付近にのみ分布する。沼U面は、海岸部より和田町下向付近まで連続して認められる。さらに、下向ダムを挟んで精査地を含む上流部にかけても沼U面が認められる。しかし、直接には連続しないため、厳密に同一面であるか否かは確認できない。また、鬼ヶ崎北側のリニアメントよりも北側部分では、段丘面の分布高度に不連続が認められ、リニアメントよりも北側の高度がやや下がっているようである。沼T面は上記の沼U面と同様に分布する。これについても、リニアメントを挟んで段丘面の分布高度に不連続が認められる。
沼T面よりも高度の高い段丘面は、その分布高度の違いにより2面に区分できるようである。両段丘面ともにリニアメントを挟んで段丘面の分布高度に不連続が認められる。
竹ノ中の精査箇所では、南側のもっともはっきりとしたリニアメントを主体として、4条のリニアメントが認められ、大きく5地区に区分される。それらについて、それぞれに詳細な個別の段丘面区分を行った。それらを南より順にA〜E地区とする。
@:A地区
主リニアメントよりも南側の部分では、段丘面は上位より0〜7の8面に区分される。このうち7面(標高約65mに分布)は非常に発達が悪く、三原川左岸に一部認められるだけである。6面は、A,Bの両地区に比較的広く分布する。B地区では、最新期の段丘面を構成する。標高は約70m程度で、下位の7面との比高差は約2m程度である。5面は鬼ヶ崎地区にわずかに分布する。標高は75m程度で、下位の6面との比高差は3m程度である。
4面は上三原橋南方及び鬼ヶ崎地区に分布し、標高80m程度である。下位の5面との比高差は2m程度である。3面は、4面と同様の地区で、標高82m程度に分布する。しかし、4面ほど広くは分布しない。下位の4面との比高差は2m程度である。2面は鬼ヶ崎地区を主体として分布し、標高約84m程度である。下位面との比高差は約1m程度である。1面は鬼ヶ崎集落及びその南側に分布し、標高85〜90m程度である。0面は三原川に沿って狭い地域に分布するほか、布野橋東方のリニアメントに接する部分でも認められる。標高は90m程度である。
A:B地区
B地区は、主リニアメントよりも北側部分の上三原橋付近〜五十蔵橋南側部分のリニアメントよりも南の地域を指し、段丘面は上位よりT〜W、6の合計5面が発達する。
6面は、最低位の段丘面で、上三原橋付近に発達する。標高65〜70m程度である。W面は、標高70〜75mに位置し、布野橋東方の三原川左岸を主体として分布する。V面は標高75m程度に分布し、布野橋付近および五十蔵橋付近に分布する。U面は布野橋付近と五十蔵橋付近の標高75〜80m付近に分布する。また、布野橋付近、三原川右岸部の山麓部では、山地部からの崖錐に若干覆われているようである。T面は主に北側上がりであるリニアメントの南側に存在し、三原川右岸の標高90m程度に分布している。竹ノ中付近では、この面の上を崩壊性堆積物が覆って、平坦面がやや不明瞭になっている。分布としては、狭い範囲にのみ認められる。
B:C地区
C地区は、五十蔵橋を中心とした幅400m程度の地区で、上位よりa〜eの4面に区分される。いずれの面もリニアメントによって、同一面上が変位を受けている状況は認められない。
e面は三原川に面した部分に認められ、標高は80m程度である。d面は、主に五十蔵橋北方に分布する。標高は85m程度である。c面は五十蔵橋西側の極狭い範囲に分布し、その標高は90m程度である。b面は五十蔵橋付近に分布し、標高90〜95mの範囲に分布する。a面はこの地区でもっとも古い段丘面で、標高100m程度の三原川左岸に分布する。
C:D地区
D地区は五十蔵橋の北約300mの西北西−東南東方向に延びるリニアメント〜七軒家集落を通過する同方向のリニアメントによって挟まれた区間を示す。この区間では、リニアメントが同一面を変位させているという明確な証拠は認められなかった。
この区間の段丘面は上位より@〜Dの5面に区分される。
D面は、この区域でもっとも新しい段丘面にあたる。標高は85〜90m程度である。また、磑森〜布野にかけて、広く分布している。この面は七軒家集落に認められるリニアメントを横断して、E地区に連続して認められる。その通過部分の段丘面には、変位等は認められない。
C面は、標高90〜95m程度である。主に磑森橋北側の三原川左岸部分や、五十蔵地区で分布する。五十蔵地区は北向き斜面で崩壊地が多数認められる。
B面は、標高100m程度で、主に布野集落の南側及び五十蔵集落の西側に分布する。
A面は、標高110m程度に分布するが、その区域は狭く、点在する程度である。また、現在では、家屋が多く建設される面となっている。
@面は、標高115m以上で、磑森集落や、布野集落の一部を構成している。一部の地域では、この面を崩壊性の堆積物が被覆し、不陸のある地形を構成している。
D:E地区
七軒家集落を西北西〜東南東に横断するリニアメントよりも北側の部分を示す。リニアメントよりも上流部は、新しい堆積物によって埋積されたような地形を構成している。これはリニアメントを挟んで南側の地区が、相対的に上昇していったために生じた断層角盆地と推定される。
段丘としては、唯一D面が認められる。特徴はD地区のD面と同様である。ほかには、緩やかな不陸を伴う地形を認めることができるが、段丘面としては認められない。
・リニアメント
精査地区には4条のリニアメントが認められる。一番南に認められるものが連続性が一番よく、そのほかのものは、それに伴って生じている可能性が高い。以下、南側から順に説明する。
(最南部のリニアメント)
丸山町と和田町の境界付近〜上三原橋南方〜五十蔵橋南〜五十蔵集落南までの東西に通過するのが認められる。上三原橋までは西北西〜東南東方向に延び、上三原橋より東側では、西南西〜東北東方向の延長を示す。以下西側よりリニアメントに沿って特徴を示す。
宝性院南側及び西側では、リニアメントは尾根の高度不連続による鞍部や、地形の遷緩線として認められる。また、リニアメントを挟んで南側の山地部には明瞭な三角末端面が認められる。上三原橋南側でも同様に、リニアメントを挟んで地形の遷緩線と明瞭な三角末端面が認められる。布野橋南側では、リニアメントはほぼ東西に延び、一部では明瞭な鞍部を形成する。また、リニアメントの南側には0面段丘が認められる。五十蔵橋南側では、リニアメントは東北東〜西南西方向に延長し、急峻な山地部を通過する。この部分では、リニアメントによる尾根の不連続や鞍部を形成する。また、工事中の道路切土部分において、リニアメント位置に断層が認められている。それよりも東側では、リニアメントはやや不明瞭となる。
(竹中橋付近のリニアメント)
宝性院北側部分から布野橋東側にかけて北西〜南東方向の延長方向を持つ。見かけ上、北側が上昇しているように見受けられる。宝性院北側のリニアメントは、崖錐性の堆積物によって覆われた山麓部と、山地部との間を通過する。そのほかの部分では、段丘面と山地部との境界を通過する。
(五十蔵橋北側のリニアメント)
五十蔵橋北側の山地部、小谷を通過し、三原川を横断して東側山地部に延びる。延長方向は、ほぼ前述のリニアメントと同方向で北西〜南東方向である。相対的に北側が隆起した地形を形成する。しかし全体としては三原川を横断する部分を除いて、明瞭ではない。
(七軒家集落のリニアメント)
七軒家集落北西側〜七軒家集落〜南東山地方向の延長を持つ。相対的には南側隆起の特徴を示す。このリニアメントを境界として、南側には段丘面が発達するが、北側には、段丘面は発達しない。このリニアメントはD面の段丘面を横切るが、段丘面に変位地形は認められない。