(6)【南断層】高鶴地区

・選定理由

橋本〜高鶴〜原にかけては、「日本の活断層1991」において確実度Tとされている部分である。

南側山体と北側盆地部分の境界には強いリニアメントが認められ、その北側低地には南側隆起によってせき止められたと考えられる低地が広がっている。低地部の堆積層序を組み立てることによって、活動性の評価が可能であると考えられた。

・概略

当地区は南側に急峻な山地が広がり、北側(洲貝川及び曽呂川左岸)には、浸食及び崩壊の進んだ山地及び丘陵地が広がっている。また両者の間には橋本〜高鶴にかけて、東流−南流する洲貝川、および中町〜原〜太海にかけて東流する曽呂川が主な河川として認められる。リニアメントは南側の急峻な山地と、洲貝川左岸、曽呂川左岸に広がる丘陵地との間に、ほぼ東西方向の延長を持つ。

洲貝川左岸の山地及び丘陵地では、地すべり及びそれに伴う崩壊地が随所に認められる。

平坦地は、大きく区分して洲貝川に沿った部分に認められる。段丘面が認められるが、その発達は比較的弱い。

・山地

山地は大きく分けて、リニアメントよりも南側の急峻な部分と、リニアメント北側及び、曽呂川左岸部分の比較的緩やかな部分に大別される。

南側の山地部分は、200m〜250m程度のピークを持ち、リニアメントを挟んで、明瞭な急崖をなす部分も認められる。また、河川による浸食のため、深い渓谷が形成されている。しかし、いずれの河川も形成されている渓谷の規模に比べ、その水量が少ないという特徴を持つ。

また、リニアメントによって、分離丘陵となった小丘が高鶴地区に認められる。

・丘陵地

畑〜高鶴にかけての洲貝川右岸部では、強く浸食を受けているほか、地すべり及びそれに伴う崩壊地形が随所に認められる。また、橋本集落東方では、南北性のリニアメントが認められる。

・低地部及び段丘地形

洲貝川沿いと曽呂川沿いに認められる。洲貝川沿いでは、リニアメントを挟んだ北側部分では、段丘面の発達は弱い。一方、リニアメントを挟んだ南側には、山地部の急峻な斜面に4面以上の段丘面が、かなりの比高差で発達する。通常、河川は山地部から平地部へと流下する。しかし、ここでは逆に平坦地から山地へと川が流下している。これより、リニアメントを挟んだ南側が北側に比べて相対的に上昇している可能性が指摘される。

段丘面については、国土地理院(1982)で示されている基準に従って、洲貝川沿いに海岸部から調査地区まで区分を行った。

その結果、大きく分けて沼T面〜沼W面および、それよりも古い面の5面に区分される。河川勾配は奥谷付近までは緩やかであるが、それよりも北側では、急勾配になる。段丘の分布は、沼W面については、海岸部にのみ認められる。また、沼V面は海岸部〜曲松付近まで分布する。沼U面は、畑地区近傍のリニアメント南側まで、連続して認められる。沼T面は、海岸部より畑地区近傍のリニアメントを挟んだすぐ南側まで、連続して認められる。沼T面よりも古い段丘面は、市井原よりも北側に点在する。この段丘面もリニアメントを挟んだ北側には認められない。

いずれの段丘面もリニアメントを挟んだ北側にはほとんど発達しない。

・リニアメント

リニアメントを中心に、リニアメント近傍の状況を調査地西側より順に説明する。

リニアメントは、山地部と丘陵部の境界をなし、橋本集落南側の山地部の縁端部として、東西方向に認められる。リニアメントを挟んで傾斜の不連続があり、緩傾斜部分では、崩壊による崖錐性の堆積物によって、広範囲が被覆されている。

洲貝川をリニアメントが横断する部分では、リニアメントの南側に段丘面が認められる。しかし、リニアメントの北側では、段丘面は発達しない。また、洲貝川東側には、谷中分水嶺が認められる。

高鶴地域では、リニアメントを挟んで、上流側が埋積された断層角盆地の形態を示している。しかし、北側の断層角盆地はリニアメントから200m北側の丘陵尾根を頭部とする地滑り土塊によって埋積されている。リニアメントは山地と低地との境界としてはっきり認められる。

南流する南側山体での川幅は10m程度であり、尾根からの比高差は30m以上である。

表流水は認められないが、地形的には深く谷を形成している。また、リニアメントによって生じた分離丘陵と三角末端面が明瞭に認められる。

南側山体の地質は、シルト岩〜細粒砂岩で構成される。砂岩中の割れ目は間隔10cm以上と広く、破砕帯は認められない。北側の地すべり土塊は地形的に細かな小段が認められる以外、露頭は認められない。