北断層西地区で唯一、リニアメントが認められなおかつ、新しい被覆層が存在している地区である。そのため、断層の活動性の評価できる地区である。
・リニアメント
当地区は南流する河川を挟んで山体及び低地部が存在する。このうち東側の山体では、直線的な急な崖地形が明瞭であるが、沢を挟んで西側の山体では、傾斜異常は認められるものの、リニアメントは明瞭ではない。
・地形
東側山体のリニアメントは比高差30m以上の急な崖地形として観察される。しかし、その崖地形は西側には存在しない。そのかわり、西側山体には、最大幅300m以上の地滑り地形が認められ、地すべり防止区域に指定されている。地すべり移動土塊はその末端部で南流する河川に押し出しを生じ、樹木が傾斜し、新しい対策工(擁壁)がなされ、抑止工としている。
段丘面は3面、4面、沖積面の間に数面認められるが、その蛇行は河川の流れに調和的で、かつ河川に向かって順に比高差が減じている。また、段丘面には、特に一定の方向を持つ直線的な縁辺地形や高度差は認められない。
・地質
西側山体には、多くの岩盤露頭が認められ、おもにシルト岩及び、細粒な砂岩からなる。また、一般に5〜15cm間隔で東西性の高角な割れ目が卓越している。シルト岩・砂岩は東西方向の破砕帯を有し、破砕部は1センチ以下に細片化している。
・判定
新しい地形面(段丘面)には、明瞭な変異地形は認められない。山体部ではリニアメントに平行な破砕帯及び断裂系が認められている。以上から、リニアメントの形成原因は地質断層(古い破砕帯)による差別浸食であると判断され、かつ、活断層の存在を指示する証拠はなにも見いだされなかった。従って、西地区では活断層調査地点はないと判断される。